2010 Fiscal Year Annual Research Report
転がり接触面端部および微小転動体の塑性変形進行を考慮した転動疲労現象の解明
Project/Area Number |
21560153
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
松本 將 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40367173)
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Keywords | 機械要素 / トライボロジー |
Research Abstract |
平成22年度の研究目的は「転動疲労発生に及ぼす接触圧力分布と油膜圧力分布の位置関係の解明」とした。表面粗さと油膜厚さの比で決まる転動面の初期なじみ(表面粗さレベルの摩耗と塑性変形)の進行と弾性流体潤滑油膜圧力(厚さ)分布との位置関係の有無を解明した。また初期なじみ領域分布と転動疲労ピット発生位置の関係から油膜圧力分布考慮の要否を明らかにした。現象確認実験として、転がりすべり試験機を用いた。回転軸端に軸受球を固定し、平板(純すべり条件)及び回転ローラ(純転がり条件)で接触圧力1GPaにて運転した。試験球は転がり軸受標準球、平板は銅合金、ローラは軸受鋼とした。形成される油膜厚さの最小値と平行部値の間が表面粗さ値になるようにした。純すべり条件での実験の結果、ごく初期運転のなじみ接触痕パターンは、表面粗さがないとして計算した油膜厚さ分布と同様になり、混合潤滑状態でも最小油膜厚さ部分の接触が最初に生じ、表面粗さの摩耗も大きいことが分かった。また純転がり条件の実験でも、初期接触痕バンドは、最小油膜位置に生じ、その部分に微小ピットが存在することを見出した。これらの結果から、転動疲労の起点となる表面粗さ突起干渉は最小油膜部分で生じ、その位置は油膜を考慮しない最大接触圧力位置(従来の方法)とは異なることが明らかとなった。油膜圧力分布を考慮しない従来の接触圧力やPV(接触圧力X相対すべり速度)値を基準とする方法は、便宜的なもので接触面内のミクロ接触過酷さ分布を考慮していないことが分かった。特に混合潤滑状態で、弾性流体潤滑油膜厚さ分布パターンと同じ接触パターンが生じることはこれまで確認されたことがなく、転動疲労設計手法を見直す必要性が生じた。接触面内のどの位置が転動疲労損傷発生の起点かについては更に実験検証して行く必要があり、転動疲労実験とともに転動面設計手法を見直す作業を次年度に実行する。
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