Research Abstract |
リングオンブロック型高速摩擦摩耗試験機を用いて,ブロック材料(PEEK複合材料,PEEK材料,WJ2)とリング材料(鍛鋼SF540A)の組み合わせにおいて,油潤滑下での耐焼付き性を向上させるための方策として,(1)ブロック表面粗さの平滑化,(2)ブロック表面に作製した油溝,(3)ブロック材料の熱処理(アニーリング)について実験を行った.すなわち,(1)では,ブロック表面粗さは0.03~4,8μmRaの範囲で変化させ,焼付き挙動を調べた.(2),(3)では,油溝の寸法や本数及び熱処理温度(アニーリング)や時間が焼付き挙動等に及ぼす影響を調べた.実験はすべり速度10~20m/s,荷重294N~1200Nの範囲で行った.使用潤滑油は無添加タービン油(ISOVG46,滴下潤滑)で,流量は64cc/minとした.リング表面粗さは0.12μmRaとした.実験時,摩擦トルク及びリング表面下1mm位置での試験片温度を測定した.以下に得られた結果を示す. (1)PEEK材料の摩擦摩耗挙動はブロック表面粗さに依存して変化した.すべり速度10m/sでは,PEEK材料は~3μmRaの表面粗さで摩擦係数が高く焼付きの兆候を示したが,WJ2は低摩擦低摩耗を維持した. (2)19m/sでは,WJ2はすべての表面粗さで焼付きを生じた.これに対し,PEEK複合材料は~0.9μmRa,PEEKは~0.1μmRa以上の表面粗さで焼付きを生じた.流体潤滑を維持し焼付きを防ぐためには,PEEK材料の表面粗さは小さい程よいと言える. (3)油溝が1本の場合が0,2,3本の場合より摩擦係数が小さく,油膜形成に効果があることがわかった.油溝の深さは,0~0.8mmの範囲でほぼ同じ摩擦係数を示した.従って,最適な油溝本数及び形状・寸法等を見出すことにより耐焼付き性を向上させることができると思われる. (4)PEEKは160℃以上の温度でアニーリングをすると焼付きを生じた.従って高温度でのアニーリングは耐焼付き性を悪化させる.PEEK複合材料は,120~240℃のアニーリング温度では,焼付きを発生せずアニーリングの影響は見られなかった.
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