Research Abstract |
ブロックオンリング型高速摩擦摩耗試験機を用いて,高速すべり条件下におけるPEEK樹脂材料の焼付き挙動を調べた.使用材料は,ブロック試験片として炭素繊維充填PEEK,未充填PEEK,WJ2,リング材料は鍛鋼SF540Aである.実験はすべり速度10~20m/s,荷重増加試験の場合,荷重は~1200Nまで1N/sの割合で増加させた,荷重一定試験では884N(一定)で行った.使用潤滑油は無添加タービン油(ISOVG46,滴下潤滑)で,油温30℃,流量64cc/minで摩擦面に供給した.リング試験片は円筒研削仕上げを施し表面粗さは0.12μmRa,ブロック試験片はエメリー研磨仕上げを施し,表面粗さは0.2μmRaとした.実験時,摩擦トルク及びリング表面下1mm位置での試験片温度を測定した,以下に得られた結果を示す. (1)荷重増加試験による焼付き開始荷重に及ぼすブロック表面粗さの影響について: すべり速度19m/sでは,ブロック表面粗さが大きくなると焼付き開始荷重は急激に低下した.例えば,0.2μmRaでは1200Nを越えても焼付きを生じないが,~1μmRaでは400Nを超えると焼付きの兆候を示した.これはPEEK樹脂材料が塑性変形しにくいためになじみの進行が遅く,摩擦面温度が上昇しやすいためである.焼付き防止のためには,PEEK樹脂軸受は滑らかなほど良いと言える. (2)リング試験片に低流量のエアジェットを噴射した場合の摩擦摩耗挙動について: 摩擦面温度を低下させるための試みとして,低流量(70 litter/min)のエアジェットをリングに噴射すると,焼付きを発生しない条件下(15m/s,588N)では,噴射しない場合と比較してリング温度は10℃程度低下した.焼付きを発生する条件下(15m/s,883N)でも,エアジェットによりリング温度の上昇率を低下させることが可能であることがわかった.従って,高流量のエアジェットでは更なる温度低下及び焼付きの回避が期待できると推察される.
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