Research Abstract |
コア部と円筒部から成る複合流体ジェットは,適当な条件のもとで,表面張力不安定によりコア部が円筒部によりカプセル化されることが知られている.このカプセル形成では内界面での表面張力や粘性応力が重要な影響を与えることがこれまでの解析により明かになった.このとき,粘性のひずみ速度依存性(非ニュートン効果)や表面張力の温度・濃度依存性(マランゴニー効果)はジェットが大変形するとき顕著に作用することが予想され,カプセル化に及ぼすそれらの影響を調べておくことは実用上重要である.本年度は昨年度に引き続き,コアと円筒部流体が同程度の密度からなる複合ジェットにおいて,非ニュートン粘性をCarreauモデルで近似して得られたジェット方程式の数値解析をさらに詳しく行った.ジェットのスケールが小さくなるにしたがい,レイノルズ数やウェバー数が小さくなるため,レイノルズ数が10,ウェバー数が10から100の範囲を選び,さらに擬塑性,ニュートン,ダイラタントの3種類の粘性パラメータを固定し,それぞれの場合についてウェバー数と界面張力に対して破断の様子を調べた(なおすべての解析は最も不安定となるような撹乱周波数を半無限ジェットのノズル出口に与えることにより行われている).その結果,円筒部が「破断」,「バルーニング」及び「閉じる」の三つのパターンで崩壊することがわかった.「破断」及び「バルーニング」はカプセル化を妨げるように働くため,カプセル形成のために必要な崩壊パターンは「閉じる」である.しかし,擬塑性流体の場合,十分小さい界面張力もしくは小さなウェバー数領域を除いて,ほとんどの場合「破断」により崩壊する.一方,ニュートン流体の場合「破断」は「バルーニング」に置きかわり,さらにダイラタント流体ではより広い領域で「バルーニング」は「閉じる」で置きかわり,よりカプセル化が可能になる.実際の使用が予想される高分子溶液は擬塑性流体である場合が多いため,ニュートン粘性で予想されるより「破断」による崩壊が起こり,カプセル形成の妨げになることが予想される.
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