Research Abstract |
本研究では,MR流体中を伝播する超音波の伝播特性が印加磁場によってどのように変化するかを調べる事を目的として,実験を遂行した.従来の研究から,ある程度の現象は把握できている.そこで,本年度は,より精密に音速変化を計測できる計測システムを構築した. 従来,MR流体を使用する場合,内部微粒子の沈殿が問題となっているが,その詳細は明らかになっていなかった.本年度は,音速の経時変化から内部微粒子の沈殿挙動を把握する事を,まず試みた.その結果,印加磁場強度に応じて音速の減衰割合が異なり,音速変化を調べる事により,内部微粒子の沈殿状況を把握することが明らかになった.また,ある程度磁場強度があれば,内部微粒子の沈殿効果はほとんど無視できることもわかった. 次に,MR流体内部に含まれる磁性体微粒子の体積分散率を変化させ,音速変化の状況を詳細に調べた.使用したMR流体の微粒子体積分散率は,22%,32%,40%である.磁場強度は,0mTから500mTまで変化させた.その結果,体積分散率の増加に伴い,音速の増加割合が高まることがわかった.また,体積分散率が高いとMR流体としての磁化が高まり,その結果,磁場の影響を受けやすくなり,内部微粒子の沈殿が押さえられる事が明らかになった. 最後に,超音波の周波数を変化させ,音速がどのように変化するかを調べた.音速の周波数依存性は認められたが,内部微粒子の体積分散率および印加磁場強度変化との相関は顕著ではなかった.これは,微粒子直径はミクロンサイズのおきさでありクラスタもそれなりに大きなため,周波数(波長)の影響をあまり受けないためと考えられる.今後,数値シミュレーションを用いた解析が必要と考えている.
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