Research Abstract |
昨年度に引き続き,磁性流体・MR流体中を伝播する超音波伝播特性が,印加磁場によってどのように変化するかに着目し,研究を遂行した. 本年度は,印加磁場強度の時間的変化(スイープレート)の影響を検討した.この磁場強度の時間的変化を分かり易く言えば,例えば500mTの磁場まで,1分かけて増加させるのか,10分かけて増加させるのか,といった事である。実験の結果,どのスイープレートにおいても,磁場印加経過時間に応じて,音速は一旦下がって極小値を取り,その後は増加することがわかった.この音速極小値に達するまでの時間を特性時間と考えると,スイープレートとこの特性時間の間には,顕著な関係があることがわかった. 次に,矩形断面を持つ二次元流路内の磁性流体流れに関する実験を行った.過去の円管内振動流の研究から,磁場印加時間に応じて内部に形成される鎖状クラスタの成長が異なり,その結果,速度分布が変化することが明らかになっている.そこで,この詳細を明らかにするために,計測が容易な定常な二次元流れを取り上げた.圧力損失と超音波伝播速度の同時計測を行い,磁場印加時間の流れ場に及ぼす影響を検討することを試みた.本年度は計測システムの調整が完全に整わず,超音波伝播速度測定において信頼できるデータが十分得られなかった. 静止状態で磁場を一定時間印加し,電磁弁によって瞬間的に弁を開放させた直後のダクト内の圧力損失の測定を行った.様々なレイノルズ数,磁場印加時間に対する実験を遂行した.いずれの場合も,弁の開放直後に急激な圧力損失増加が見られ,約1秒後にその値は減少し,その後はほぼ一定の値を保った.しかし,定常になった状態での圧力損失には磁場印加時間による差異が見られた.この事から,内部に形成された鎖状クラスタの形態が磁場印加時間に応じて変化しており,さらにその崩壊過程も異なっていることが明らかになった.
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