Research Abstract |
伝熱面に溶射皮膜を施した狭隘路型コールドプレートに対し,HCFC123を作動流体とした沸騰実験を行い,沸騰熱伝達特性に及ぼす(1)流動.加熱条件(質量流束,乾き度,熱流束),(2)流路形状,姿勢(流路高さ,水平面に対する流動方向)の影響を評価した.その結果,平滑面の場合,沸騰熱伝達に及ぼす流路姿勢の影響は小さいが,溶射皮膜を施した伝熱面については,低質量流束,低乾き度の条件で水平流路下面加熱より上面加熱の方が,熱伝達率が高くなった.さらに,設置角度を45゜刻みで操作したところ,下面加熱から上面加熱に流路を回転させた場合,沸騰熱伝達は徐々に向上し,上面加熱で最大値を示した.その後,下面加熱に戻してもその熱伝達率は維持された.これは,上面加熱の方が蒸気泡を伝熱面近傍に維持でき沸騰核の数密度が高くなったためと考えられ,その後下面加熱に戻しても沸騰核は消失せず維持されたものと考えられる.プール沸騰実験で見られた熱流束設定の履歴の影響と同様の現象であり,伝熱促進効果の大きい溶射面で顕著に見られたものである. 一方,限界熱流束の向上,高熱流束条件での気泡微細化沸騰発生の可能性を評価するため,高熱流束加熱が可能な試験部を製作し,フロリナートFC72を作動流体とした沸騰実験を行った.その結果,伝熱面に関わらずサブクール度が大きくなるほど限界熱流束が向上したが,高い熱伝達率を示す溶射皮膜面の方が限界熱流束が高くなった.さらに,その差はサブクール度が大きいほど大きくなった.この要因として,溶射皮膜面のほうが沸騰核の数密度が高く,高い熱伝達率が得られるとともに,気泡径が小さく,気液界面積濃度が大きくなるので,サブクール水中で凝縮し,大気泡が形成されなかったためと考えられる. 冷却面に対する溶射伝熱面の優位性が確認され,すべての実験条件において高い伝熱促進効果が得られることも確認された.
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