Research Abstract |
昨年度(平成21年度)の成果から,高いサブクール度であっても表面沸騰による伝熱が実現されること,溶射皮膜によって沸騰熱伝達率の向上,限界熱流束の向上が両立して得られた.特に,入口サブクール度40Kの条件において,限界熱流束が20%向上する結果を得た.向上効果の要因は蒸気泡の界面積濃度とバルク液中での凝縮にあると考えられるので,流路高さをより小さくした試験部に対し実験を行い,その効果を検証した.その結果,溶射伝熱面の場合,高流速条件(Re=約4600)では限界熱流束に対する流路高さの影響は小さかったが,低流速条件(Re=約2300)では流路高さを4.0mmから2.0mmに小さくすることで限界熱流束が低下する傾向が確認された.今後,その要因について探求する. 一方,機器冷却への応用を考えると,起動時での応答,すなわち加熱後の沸騰開始挙動が問題となる.沸騰遅れが大きくなると壁面の過熱が大きくなるため機器性能を損なう恐れがある.そこで,急加熱時の沸騰開始過熱度を評価した.その結果,溶射皮膜による沸騰開始過熱度の低減効果が確認された.特に高熱流束域において,その効果は大きく,最大で15K程度の低減が得られた.また,試験部出口のバルブ操作によって試験部の圧力を操作による沸騰開始の操作を試みた.この方法は,加熱前出口バルブを絞り,試験部の圧力を高い状態に保持する,次に加熱開始から一定時間経過後バルブを開放し,試験部圧力を低下させることで沸騰核生成を促進させるものである.バルブ開放が遅くなれば,沸騰開始を遅らせ高い壁面過熱度が得られる.溶射皮膜の場合,沸騰開始時期の操作で,操作しない場合に対し,沸騰開始過熱度を低減できること,沸騰開始を遅らせ壁面過熱度を大きくすれば,定常後の壁面過熱度を小さく,高い熱伝達率が得られることが明らかとなった.この効果は溶射皮膜においてのみ確認された.
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