Research Abstract |
本研究は,溶射加工で作成した核沸騰伝熱促進面を利用した低圧損コンパクト熱交換器の実現を目指しており,狭隘流路型コールドプレートを対象とした熱流動特性,特に,(1)沸騰熱伝達特性に及ぼす流量形状,流路姿勢の影響,(2)起動時の沸騰開始過熱度,(3)限界熱流束について研究を行った. (1)では,広い乾き度の範囲で核沸騰伝熱支配であり,最大11倍の安定した伝熱促進効果が得られること,高乾き度で強制対流蒸発になるような条件では伝熱促進効果は得られず,平滑面の熱伝達に近づくこと,層流と考えられる低質量流束では溶射面のみ熱伝達率に及ぼす姿勢の影響が大きく,水平流上面加熱することで熱伝達率が向上することが明らかとされた.(2)では,溶射皮膜による沸騰開始過熱度の低減効果を確認した.この効果は高熱流速条件で特に大きく,最大で15K程度の低減が得られた.また,試験部出口のバルブ操作による試験部圧力操作で沸騰開始過熱度を低減できることを示した.次に,(3)では,飽和沸騰での限界熱流束が平滑面の場合とほぼ同じであることを明らかにした.沸騰伝熱促進は伝熱面上での蒸気生成量が大きいことを意味するが,限界熱流束の低下につながらないことは大きな意味を持つ.さらに,サブクール沸騰の条件では,溶射面のほうが高くなる結果を得た.沸騰状況の可視化結果から,サブクール度が40Kと高い場合には,蒸気泡の合体による大気泡の形成とその急凝縮による圧力変動がバーンアウトの引き金となることが確認されたが,溶射面の場合,伝熱面で形成される蒸気泡の径が小さいため,大気泡形成に至らず凝縮し,圧力変動が発生しないためであることが明らかとされた.沸騰伝熱促進と限界熱流束向上が同時に得られたことは機器冷却に対して極めて有効な伝熱面と言える.
|