Research Abstract |
四重安定性に関する実験的な成果として,PD制御器を磁性カムで代替した実験装置を開発し,所望の四重安定性を実現した。このために,周期πの復元力を発生する磁性カムを開発し,上下死点で安定する振子を2台製作し,リニアガイドを介して共通のレール上に設置した。この装置を用いて,まず,初期値依存性の実験として,適当な刻みで設定した初期姿勢(静止状態)から,装置を自由運動させて,4つある最終姿勢のどれに到達したかを記録する実験を行なった。その結果,フラクタル領域,すなわち最終姿勢への再現性が得られない初期条件の存在が実験的に確認できた。 一方,協調棒たて実験については,上述の実験装置から磁性カムを取り除いた力学構造を有する実験装置を製作した。左右のリニアガイドにはそれぞれ操作用のハンドルを設け,被験者がこれを直接操作できる構造とした。2名を一組とする被験者らに協調バランス実験を実施してもらい,棒たて作業中の各振子の運動と,被験者の身体入力を同時に測定した。実験では,標準的な心理学的測定法に則り,被験者には共通の指示書を提示し,開始から振子転倒までを測定した。被験者の同じ組に対して,一定周期で試行を繰り返してもらい,学習の効果を観察した。以上に加えて,単独時の棒たて実験も実施し,比較用の実験データを得た。リンク棒を取り外した単独の振子での実験を,各回同じタイミングで測定・記録し,切断前後で等価なパラメータ条件を検討した。
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