Research Abstract |
超高齢化社会を迎え,シルバー世代の就業を如何に確保するかは日本において差し迫った課題である.当該世代の人々は,高度な知的判断能力を有するにもかかわらず,肉体的能力の制約から就業が困難になる場合がある.他方,介護現場において非介護者の体重を支えることにより生じる介護士の腰痛の問題は深刻であり,一刻も早くこれらの苦痛を除去することが日本の社会に求められている.これらの現状を踏まえ,我々は人の小さな力をアシストし,高齢者・女性においても重量物を軽々と取り扱うことのできるパワーアシストシステムを構築する. まず,研究者らは人体運動学モデルに基づいたヒューマンフォースオブザーバを構築した.これは,床反力と体の部位の動きから,人間が外部の対象物に対して,どの方向にどれだけの力を加えたのかの推定を行うものである.人体を13リンクの剛体運動と仮定し,両腕,両脚,胴体,頭などの加速度を計測することで,手先が外部環境に及ぼす力を最大20N程度の誤差で推定することを可能とした.パワーアシストの用途としては許容できる精度である.次に,垂直抗力とせん断力を測定可能な床反力センサを研究・開発した.類似の他のセンサと異なる特徴は,免震構造に用いられる積層ゴムを使用することで,作業者の体重を支えながらも,床反力をおよそ10Nの精度で計測できることである.最終的に,研究者所有の天井クレーン装置を用いて,推定された操作力から質量60kgの荷物をパワーアシストにより移動させることに成功した. 我々の提案するシステムは,センサ類はウェアラブルでありながらも,アクチュエータは体から離れて存在する.このため,万が一のときも作業差がパワー装置から退避でき安全であるとともに,極めて大きなアシストカを発揮する事ができる.
|