2012 Fiscal Year Annual Research Report
環境に優しい強誘電体ドメイン制御圧電材料及びデバイスの創出
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21560340
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Research Institution | Shizuoka Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
小川 敏夫 静岡理工科大学, 理工学部, 教授 (40247573)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 非鉛系圧電セラミックス / PZT系圧電セラミックス / 高圧電性 / 縦波音速 / 横波音速 / ヤング率 / ポアソン比 / DC分極 |
Research Abstract |
高周波超音波厚さ計により、縦波・横波音速を測定し、圧電性と材料定数(ヤング率・ポアソン比等)との関係を調べ、鉛系及び非鉛系圧電セラミックスでの高圧電化のための指針を明らかにした。 実験は周波数30 MHzの縦波及び20 MHzの横波の発振可能なPZTトランスデューサからなる超音波厚さ計(オリンパス製35DL)により、円板試料(厚さ0.5-1.5 mm, 直径14 mm)の超音波伝搬時間(2往復目のパルスエコー間)を測定し、その伝搬速度を求めた。 測定試料として①ニオブ酸アルカリ系、②チタン酸アルカリビスマス系、③チタン酸アルカリビスマス・チタン酸バリウム系からなる非鉛系圧電セラミックス及び④二酸化マンガンを添加したハードチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系及び無添加のソフトPZT系、⑤チタン酸鉛(PLT/PT)系からなる鉛系圧電セラミックスを用いた。 圧電セラミックス①-⑤での径方向振動モードの電気機械結合係数(kP)と縦波速度(VL)・横波音速(VS)・ヤング率(Y33E)・ポアソン比(σ)との関係を調べ、kP vs VLより【PZT/PLT/ PT系】・【チタン酸アルカリビスマス系】・【ニオブ酸アルカリ系】の3グループに分けることができた。一方、kP vs VSでは全ての組成でVSの低下と共にkPは上昇した。又、kP vs Y33EではY33Eの低下に伴ってkPは直線的に上昇した。更に、kP vs σでもσの上昇と共に kPは直線的に上昇した。 従って、高kPが得られる組成は低Y33E・高σからなる。これはDC分極時に材料自体が軟らかいと(低Y33E)、分極による変形が容易になることに由来する。又、横方向(直径方向)の変位が容易に縦方向(円板の厚み)の変位に追随することに対応している。さらに、分極前後でほぼ同じ傾向を示すのは、材料自体に高圧電性の起源があるものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
周波数30 MHzの縦波及び20 MHzの横波の発振可能なPZTトランスデューサからなる超音波厚さ計(オリンパス製35DL)により、厚さの薄い円板試料(具体例:厚さ0.5-1.5 mm, 直径14 mm)でも精度よく、超音波伝搬時間(2往復目のパルスエコー間の伝搬時間)を測定できることを明らかにした。 実験で得られた伝搬時間から縦波・横波の伝搬速度を求め、更に、これらからヤング率・ポアソン比等の材料定数を算出し、これらと材料組成との関係が明らかにできた。 その結果、これまでの研究手法(主として、圧電性の大きなモルフォトロピック相境界をもつ材料組成の探索)から圧電セラミックスの材料定数面から「高圧電性」を探索すると云う新な手法を開発した。 このような研究の取り組みは、従来にない手法であり、①アメリカセラミック学会での招待講演、②「横波・縦波速度比と圧電性の大きさとの関係がDC分極の有無によらず成立すること」を見出し、これを特許出願、③ヨーロッパの科学技術出版からの要望により、専門書に寄稿、等により成果を上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
非鉛系及び鉛系圧電セラミック組成での①縦波・横波速度及び速度比、②ヤング率、③ポアソン比の関係はほぼ明らかにできたので、今後は、リラクサ圧電単結晶板について、①~③の関係を明らかにする。 我々の研究室では、既にリラクサ圧電単結晶[亜鉛ニオブ酸鉛-チタン酸鉛(PZNT)及びマグネシウムニオブ酸鉛-チタン酸鉛(PMNT)系]において、横振動モード電気機械結合係数(k31)で80%以上の「横効果巨大圧電性(巨大k31)」を見出し、国内外で特許を取得している(これまでの科研費研究で実施)。更に、この巨大k31を利用した従来にない大きな圧電性をもつ圧電ユニモルフ・バイモルフデバイスも開発済みである(国内外で特許取得済み)。 以上に鑑み、巨大k31が得られるDC分極プロセスにおいて、その縦波・横波速度を測定し、ヤング率・ポアソン比等の材料定数を求めることは、「高圧電性の起源」を知る上で極めて重要と考えられる。 従って、これまで得られた圧電セラミック材料と材料定数(縦波・横波速度比、ヤング率、ポアソン等)の相関図上に巨大k31をもつリラクサ圧電単結晶のデータをプロットすることは、圧電セラミックス及び圧電単結晶も含めた圧電材料を考える上で、極めて有用な高圧電性材料開発のための指針と考えられる。
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Research Products
(24 results)