Research Abstract |
本年度は,タイミング検査を行うべきクリティカルパスの効率的な同定手法と,電源電圧および温度の変動を取り入れた遅延ばらつきライブラリの構築手法の二つに関して,基礎的な研究を行い,新たな手法を構築する上での準備を整えた. 前者に対しては以下の知見を得た.タイミング検査を効率化するには,検査を実行するクリティカルパスの最適な集合を抽出する必要があるが,この抽出問題には,効率的解法の構築が困難な最適被覆問題が含まれる.そこで,クリティカルパスを構成する可能性の低い経路を除去し,問題の規模を縮小する手法を構築したが,この経路の除去手法が効果を発揮するには,クリティカル遅延のばらつき分布の精度を高める必要があることが判明した(そのため,この手法はまだ発表していない).そこで,ばらつき分布の精度向上手法を構築し,その一部を発表した.現在,さらなる精度向上が期待できるもう一つの手法の性能検証を行っており,次年度にはその結果を発表する予定である. 後者に対しては,遅延ばらつき要因を分析し,電源電圧および温度の変動が遅延ばらつきに与える影響を見積もる手法を検討した.また,実験により,これらのばらつき要因間の相関について調査し,論理ゲートにおける遅延の伝搬に伴って,入力信号の遅延ばらつき間の相関係数や,これらのばらつき要因間の相関係数がどのように変化するかも調べ,その結果の一部を発表した.これらの結果を用いて,電源変動および温度をパラメータとして,遅延ばらつきを動的に変化させる遅延ライブラリを構築し,それを用いて熱分布を考慮し,電源配線を最適化する手法を構築する予定である,なお,この研究を進めるに当たり,電源配線の電力解析システムを改良し,回路シミュレーションの高速化および電源系ノイズの解析システムの開発を行った.
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