2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21560365
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
高梨 良文 東京理科大学, 基礎工学部, 教授 (30318224)
|
Keywords | 電子デバイス / 光検出デバイス / III-V化合物半導体 / 超高速応答 |
Research Abstract |
現代の情報通信を支える基本技術は、光技術とミリ波技術である。光の周波数は100THzであり、光ファイバーを用いた光通信技術を利用すれば、低損失で超高速・大容量の信号の伝送が可能となる。光技術とミリ波技術を融合すれば、従来のミリ波技術のみでは成し得なかった、高機能の新技術分野を開拓することができる。このためには、光受信系の高速化が不可欠であり、フォトダイオードと電子デバイスを集積した高速OEICの実現が期待されている。現在、超高速動作が報告されている歪InAs/InGaAs系HEMTでOEICを実現しようとすると、チャンネル厚が~10nmと薄いためPDの量子効率は1%以下となる。両者の要求する膜厚が異なることがOEICの研究の進展を妨げている。本研究では、(1)上記難題を克服するため、受光デバイスとしてInAsの狭バンドギャップ半導体をチャネルとする超高速・高光利得の歪InAs系MSM-PDを開発し、(2)光信号をMSM-PDで電気信号に変換してこれを同じ基板上に作製した超高速InAs系HEMTで増幅する超高速OEICを実現することを狙いとしている。 以下に今年度の成果をまとめる。 ナノテクノロジーを駆使してゲート長0.1μmのInAs/InGaAs MSM-PDとHEMTを同一基板上に試作し、光パルスレーザ(パルス幅400fsec)とオシロスコープ(帯域50GHz)を用いて光応答特性を評価した。印加電圧を増加させるとパルス幅は18psecまで減少し飽和した。このように印可電圧が増加するのに伴いパルス幅が減少するのは、光生成された正孔のドリフト時間が減少することで説明できる。さらなる高バイアス下でパルス幅がどこまで低減するかは興味のあるところであるが、オシロスコープの帯域によって測定系の帯域が制限されているため、これ以上追究できない。しかし、これまでの研究で明らかとなったように、狭ギャップ半導体ではAuger再結合が支配的であり、通常のPDで期待されるパルス幅よりもさらに狭くなることが期待される。さらに重要な実験事実として、MSM-PDの光学特性を評価すると、チャネルが15nmと薄層であるにも拘わらずResponsivity(=光電流/光パワー)は5以上あり、Primary Photocurrentから見積もられる光利得は100を超えた。常識的にはResponsivity~1を実現するためにはPDのチャネルを~1μmと厚くしなくてはならない。もちろんこのような層厚ではHEMTと整合するOEICは実現しない。この高光利得の物理モデルについては現在研究中であるが、この高光利得はトンネル注入によるSecondary photocurrentおよびアバランシェ増幅過程に基づいていると考えられる。 また、ネットワークアナライザでHEMTの電子デバイスとしての性能を評価すると、ゲート長0.1μmにおいて電流遮断周波数は151GHz(真性遮断周波数~600GHz)まで達した。このようにして、超高速OEIC実現へ一歩近づいたといえる。
|
Research Products
(5 results)