Research Abstract |
本年度は,オーバレイトポロジーと物理網の性質がP2P動画配信サービスの通信品質に与える影響について,シミュレーションによる評価を行った.P2Pストリーミングシステムをオーバレイ構造で大別すると,ツリー型システムとメッシュ型システムの2つに分類できる.ツリー型は,通信品質を考慮した配信木を事前に構成して動画配信を行うため,映像パケットの遅延やジッタを抑制できる一方,ピアノードの参加離脱が頻繁に発生する環境だと,配信木の再構築をその都度行う必要があるため,スケーラビリティに問題がある.メッシュ型では,各ノードはツリー型のような親子関係を構成することなく複数のピアから映像データを受信する.そのため,ピアノードの参加離脱や故障に対する回復性能が高く,少ない帯域しか利用できないノードでもシステムに貢献できるという利点がある.このような利点のため,現在研究または実用化されているP2Pストリーミングシステムの多くはメッシュ型である.しかしながら,インターネットの高速大容量化が進んだ近年では,ツリー型でもより多くのノードがシステムに貢献でき,その利点を生かせると考えられる.ここでは各ノードの帯域幅を考慮し,ツリー型,メッシュ型それぞれの優位性をシミュレーション実験を通して定量的に比較実験を行った.評価指標として,ネットワークに対する負荷の測度として物理層ネットワークにおけるリンクストレスを,スケーラビリティの測度としてストリーミング配信可能なクライアントノード数について検討を行った.数値例より,FTTHノードが全体の6割を超えると,ツリー型でもスケーラビリティにおいてメッシュ型と同等の性能を示すことが判明した.
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