Research Abstract |
相関の良いスペクトル拡散系列として知られる完全相補系列を用いた電子透かし方式を考案し,その性能を計算機シミュレーションにより検証した。具体的には,ユーザID,グループIDという二つの秘密情報を考え,これらを完全相補系列で表現し,画像データの周波数領域に埋め込むアルゴリズムと抽出するアルゴリズムを考案した。計算機シミュレーションにおいては,安全性として,画像への視覚的影響の有無や程度について検証した。また耐雑音性,耐攻撃性としては,秘密情報を埋め込んだ後の画像に雑音を付加したり,結託攻撃と呼ばれる秘密情報を消去する類の攻撃を加えたりした場合に,正しく秘密情報が抽出できるかどうかを検証した。これらの検証の結果,提案した方式は,M系列やGold系列など,既存のスペクトル拡散系列を用いた電子透かし方式に比べて優れていることがわかった。 また,この電子透かし方式を拡張して,ステガノグラフィ技術を実現するアルゴリズムも考案し,視覚的に影響を与えずに,どの程度の情報量を画像データに埋め込むことができるかを計算機シミュレーションにより検証した。この結果,512ピクセル四方の画像に対して,2キロバイト程度の文字情報を埋め込んでも人間の視覚で検知することが困難であることを実証した。 提案した情報ハイディング技術を教育現場で利用しながら評価するための方式については,十分に検討することができなかった。しかしながら,技術者倫理を担当する教員と議論を行ない,次年度以降に開講する授業の中で,事例紹介やデモンストレーションを行なうなど,具体的な実施方法に関する意見交換を行なった。 年度末には,研究打合せを兼ねたワークショップを開催し,関連分野の研究者らと議論を深めた。
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