2010 Fiscal Year Annual Research Report
高温・高速・高感度動作を実現する単一光子検出器に関する研究
Project/Area Number |
21560455
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
楠 正暢 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (20282238)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三木 茂人 情報通信研究機構, 主任研究員 (30398424)
岡井 大祐 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (60336831)
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Keywords | 単一光子検出 / 高温超伝導 / ナノワイヤ |
Research Abstract |
高感度な単一光子検出器を高温超伝導体で実現しようとする場合、基本素子となるナノワイヤには(a)高い受光効率、(b)低い臨界電流I_cが要求される。初年度は、「パターニングの観点」から、ワイヤの最密メアンダパターンの加工法、装置の加工限界に迫る線幅w(100~200nm)加工法を検討した。その結果、(b)について更にI_cを小さくする必要があるという課題が残った。I_cは材料の臨界電流密度J_cとナノワイヤの断面積SによってI_c=J_cSで表わされるため、本年度は、(1)J_cを下げる手法、(2)Sを下げる手法を「高温超伝導体(YBa_2Cu_3O_y:YBCO)の成膜方法の観点」から検討した。 (1) YBCOは結晶方位に対しJ_cの異方性を有する。一般的に制御が容易なc軸配向膜(c軸膜)が多く用いられるが、a軸配向膜(a軸膜)のJ_cはc軸膜よりも約1桁小さいため、これを活用できれば加工に要求されるスペックを下げることができる。そこでa軸膜の可能性について検討した。主に結晶成長温度をパラメータとした配向制御に成功し、完全なa軸配向結晶を得ることができた。しかし、超伝導転移温度T_cがc軸膜に比較して著しく低く、これを解決するにはさらに長期間の検討が必要であると判断した。 (2) ナノワイヤの線幅wに関しては、昨年までに本研究に用いる電子ビーム露光装置の性能限界に達しているためYBCOの膜厚t(=S/w)を薄くする可能性について検討を行った。ヘテロエピタキシー膜として得られるYBCOは単結晶基板との界面付近での格子歪により、それが緩和する一定の膜厚以上となってはじめて良好な超伝導性を示す。一般的には100nm以上が多く用いられる。今回、YBCOとの格子不整合の小さいSrTiO_3(不整合2%)、NdGaO_3(不整合1)基板を用いて、tを下げることを試みた。スパッタリング成膜時の結晶成長温度、Ar,O2ガス分圧をパラメータとして適する成膜条件を導出し、従来の膜厚に対し20%(20nm)にしても、80K以上のT_cを持つYBCOの作製が可能となった。
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Research Products
(4 results)