Research Abstract |
本年度は交付申請書に記載した1.視覚オブザーバ型協調制御,2.柔軟な協調アルゴリズムの提案,3.ロボティックセンサネットワークシステムの構築の3点に取り組んだ.1.に関しては,交付申請書に記載した通りであるが,まず通信構造の仮定の緩和という理論成果の導出に成功し,この成果は国際会議に投稿中である.また,視野角の問題を軽減するために,従来のピンホールカメラを想定する理論から,全方位カメラを前提とした理論へと拡張した.また,実験面でも全方位カメラを搭載したロボティックセンサネットワークシステムへと前年度までのシステムを拡張し,さらに衝突回避や障害物回避などの機能を追加した.これらの成果は既に昨年12月に開催されたIEEE Conference on Decision and Controlにて発表済みであり,またこのほどシステム制御情報学会論文誌への掲載が決定された.課題2.に関しては,前年度までに取り組んだゲーム理論的協調制御の理論を拡張し,環境に関する事前知識がない場合でも時間の経過とともに環境を学習し,分散的な処理のみによって最適な状態にセンサを収束させる学習アルゴリズムを提案した.従来,このような機能を実現するアルゴリズムは発見的な手法に依存するものがほとんどであるのに対して,この成果は収束に関する理論的な保証を与えるものであり,非常に強いインパクトを与えるポテンシャルをもっと考えている.また,前年度のアルゴリズムは1反復辺り1台のエージェントのみに行動変化の権利を与えるものであったが,ここで提案したアルゴリズムは全エージェントが同時に行動変化することを許容しており,収束速度の高速化の意味でも重要な結果であると考える.本研究成果は既に来年度の6月に開催されるAmerican Control Conferenceに採択済みであり,学術論文として国内誌にも投稿中である.なお,本アルゴリズムはセンサネットワークの協調のみならず,エネルギーの分散協調管理システムの構築など,大規模システムの制御全般に有効であると考えられる.よって,そのようなシナリオをまとめた上で国際誌への投稿も予定している.さらに,本学習アルゴリズムを実装可能な構成に上記の実験システムをさらに拡充した.
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