Research Abstract |
研究における中心的な道具立てとなる高速リフティング手法において,サンプル値系およびむだ時間系におけるcompression作用素の準有限ランク近似に関する精度を高めることは,非常に重要である.この問題について,ヒルベルト・シュミットノルムに基づく従来手法を発展させた,1段階近似および2段階近似手法を整備し,さらに,その際の近似誤差の大きさをより保守性を低減させた形で評価する手法を導いた.後者の近似誤差の保守性に関する改善は,三角不等式を適用する手法を工夫したことによるものである.同様の工夫は,準有限ランク近似に基づくサンプル値系のロバスト安定解析,ならびに,むだ時間系の作用素リアプノブ不等式に基づく安定解析において,準有限ランク近似誤差の影響を厳密に評価し,近似手法のもとでの厳密な十分条件を導出する際の三角不等式の適用においても展開することができる.このような議論を通して,作用素ベースでの研究に関して大きな成果が得られた. 一方,代数的拡張に関しては,離散時間系の周期時変スケーリングに基づく制御器設計に取り組んだ.解析においては,非因果的周期時変スケーリングが,仮に静的なものであっても,従来手法においては動的なスケーリングに対応して,そのことが非因果的周期時変スケーリングに基づく解析手法の有効性を導く基本的な性質となっていることが明らかになっている.この特徴を制御系設計に活かすべく,周期時変制御器の設計問題を取り扱い,線形行列不等式に基づく繰り返し計算による設計法を与えた.また,そのような手法が,時不変制御器を設計するための従来手法と比較して,非常に有効であることを数値的検討により明らかにした.
|