| Research Abstract |
今年度はこれまで空間構造,特に空隙構造の定量評価に用いてきた点過程統計量とセメントペーストの電気伝導特性との関連を明らかにし,さらにこの手順をモルタルやコンクリートに展開して,セメント系材料の物質移動特性を評価する手段として確立することを目的としていた.加えて,研究計画の最終年度であるため,全体の総括を行うことを最終目標とした.
点過程統計量のうち,最近傍距離関数を用いある距離以下では移動経路が存在すると仮定して,電気伝導特性との相関を調べようとした.しかし,この最近傍距離を用いて経路を繋いでいくプログラミングが進まず,結果として点過程統計量と伝導特性との対応性を明確にすることはできなかった.しかし,その一方で,点過程統計量により水酸化カルシウムの空間構造の変化を定量的に評価しうることが明らかとなり,ポゾラン反応にともなう電気伝導性の低下を点過程統計量の変化として理解することができた.
また,空間統計量による評価をコンクリートへ適用することに関して,これまでのモルタルに対する手法をそのまま適用することを試みた.特に,耐久性を意識し,実コンクリート構造から採取したコアの解析を行った.しかし,経年劣化したコンクリートは非常に不均質な組織であって,空隙構造の点過程統計量を評価する以前に,代表領域を改めて考え直す必要性があることがわかった.これを検討するには低倍率の反射電子像が有用なことが示され,問題解決の方針を明確に認識することができた.
耐久性に関連して,中性化による組織変化を画像解析により明らかにし,粗大な毛細管空隙の中でも小さい径の空隙および分解能以下の空隙構造が変化することが明らかとなった.これより,中性化反応にともなう空隙充填は,微細な毛細管空隙レベルの電気伝導経路遮断としてとらえられることになり,その充填割合と連続性遮断の評価を今後の検討課題とした.
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