2009 Fiscal Year Annual Research Report
地中に構築されるコンクリート構造物の長期耐久性予測に関する研究
Project/Area Number |
21560491
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
関 博 Waseda University, 理工学術院, 教授 (40120919)
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Keywords | 地下空間 / 還元性環境 / 鉄筋腐食 / アルゴン脱気 / 不動態 |
Research Abstract |
社会基盤施設として地下空間を有効利用することが求められており、最近では放射性廃棄物の処分施設などが計画されている。しかし、地下空間に構築された密封環境にあるコンクリート構造体の耐久性に関して、研究例は極めて少ない。地下環境での鉄筋は当初は酸素拡散での腐食であるが、その後は、酸素欠乏状態での腐食挙動に移行するが、この過程での腐食機構と腐食速度を得る必要がある。 研究のアプローチとしては、腐食量の極めて少ない鉄筋腐食に関してまずは試験方法を確定することが必要である。とりわけ、酸化性環境から還元性環境(酸素脱気環境)に至る試験装置(酸素脱気装置)の整備や腐食測定方法(電気的測定、腐食生成物の測定法、不動態皮膜の分析など)に関してエネルギーを注いだ。 実験に供した供試体は鉄筋を埋設したコンクリート体であり、低温恒温高湿装置を用いて約1ヶ月間の乾湿繰返し試験を行った。その後、真空デシケータ内でコンクリート中の酸素をアルゴン脱気し、還元性環境を模擬した実験装置(50℃、溶存酸素濃度0ppmの水溶液)に移して浸漬試験に供した。測定項目は、鋼材の自然電位、鋼材のアノード分極特性、腐食生成物の解析などである。 実験結果によると、鋼材の自然電位は非常に卑な値になるが、これは浸漬試験において溶液中を極低酸素濃度にしたことで鋼材周囲の酸素が徐々に減少して、カソード反応および腐食反応が抑制されたためと考えられる。また、分極特性に関しては鋼材が不動態域にあると思われ、腐食速度は安定して小さいことがわかった。腐食生成物に関してはX線回折結果からFe3O4を見出すことができたが、生成原因に関しては更なる検討が必要である。今回の試験で、試験方法を設定することが可能となる共に、還元性環境に至る腐食状況をある程度把握することが出来た。
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