Research Abstract |
気候変動に伴う潮位や高波の極大値について,経年のトレンドに加え,SOI(南方振動指数)やAOI(北極振動指数)のような気象指数を共変量とした極値統計モデルに基づいた解析法の提案である.1)我々の研究で提案する「経験度」を用いることにより,共変量が外れることで,特異な条件が統計モデルを歪ませるような問題が生じていないか,感度分析ができることが新たにわかった.また,年最大値や極大値は本質的にデータ数が少ないため,経年のトレンドの検出は難しいという宿命がある.共変量を伴う極値モデルに対しては,経験度(の逆数)は,共変量のてこ比と,極値の確率変動(純粋な経験度の逆数)に分解される(これら2項の和で表される).このことを利用すれば,トレンドが検出されにくい場合も,時間の経過とともに,信頼区間の幅が増えて,検出されないトレンドを代用した推定結果を得ることが可能となる.このことを言葉を変えて言えば,「データの鮮度」が低下することに伴う回折効果として表される.2)従来法では,再現レベルに対して,対称な信頼区間として与えられていたが,本研究では,発生強度を陰リンク関数とするプラグイン推定を行い,上方に長く,下方に短い非対称な信頼区間を作成することができる.このような非対称性は,従来の応用統計学分野では,プロファイル尤度を用いた信頼区間を作成することにより,実現できる場合もあるが,最適化の計算が必ずしも成功するとは限らず,一度に信頼区間を多量に必要とする場合(信頼区間の経年変化など)には,現実的な計算に不利であるのに対し,我々の提案する「経験度」を用いたプラグイン推定では容易に計算可能である.3)モデルの適合性に経験度を用いて,「窓枠」を設けることにより,確率モデルで扱える領域と,もはや確率モデルでは扱えない領域(そのような巨大外力に対しては,特別な対策を講じる必要がある)に分けられることを示した.後者の領域は「想定外も想定する」議論に密接に関係し,災害の原因となる来襲外力の対策について,今後の検討を要する.
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