Research Abstract |
本研究では,粘着性土からなる流路の変動のメカニズムを解明することを最終的な目的としています.ここで対象とする土砂は,砂礫の間隙を埋める程度に粘土が含有されるものであり,具体的には全土砂に占める粘土の体積比率(これを「粘土含有率)と呼ぶ)が30%未満のものです.そして,このような材料により構成された流路が流水による浸食を受けて変形していく過程を明らかにするための検討として,次のような実験的研究を行いました.第一に,砂礫に0~30%の粘土が含有される供試体を対象とした一連の実験を行い,これにより浸食速度に及ぼす粘土含有率の影響を調べることにしました.粘着性土の浸食速度予測式に関しては,粘土含有率が30%~100%の条件下で著者らにより誘導されたものがありますが,本研究の検討を通じて,少なくとも粘土含有率が13%以上であればこの予測式がそのまま適用できることが明らかになりました.なお,この際,実験に用いる供試体の作成方法についても検討を行い,新たな手法を確立することができました.次年度は,さらなる検討を続け,この適用限界を明らかにしていく予定です.第二に,上記のような粘土含有率の材料により構成された「粘着性模擬流路」を実験水路内に形成させ,その変動過程に関する検討を行いました.その結果として,粘土を少なくとも16.5%以上含有した流路の場合には下方浸食が卓越して相対的に狭くて深いものへ,それ以下であれば側方にのみ浸食が広がる広くて浅いものへとそれぞれ変化することが確認されました.なお,粘土を含有しない砂礫のみの場合には後者の結果と定性的に一致します. 本研究では,浸食されながら流路が刻まれるプロセスを別途調べる斜面浸食の実験と,大きな粒度幅をもつ混合粒径河床上の流砂過程に関する実験とをあわせて行ってきており,着実に成果が挙がってきていると考えております.
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