Research Abstract |
接合部パネルのせん断変形が骨組の変形能力および耐力に及ぼす日米の研究を収集・再検討し,両国が実験より得た知見にも設計方針と同様の相違があることを確認した.即ち,日本が接合部パネルの塑性化により骨組の塑性変形能力が増加するとの立場であるのに対し,米国は,接合部パネルの早期降伏は,悪影響を及ぼすとの立場である.接合部パネルの耐力の評価法と塑性変形能力の定義の相違も,この一因と考えられるが,他に,柱梁接合部の接合形式の相違(工場溶接接合,現場混用接合)により,i)梁下フランジの開先の方向(日本:内向き,米国:外向き),ii)梁ウェブの接合方法(日本:溶接接合,米国:高力ボルト接合),の相違の影響を検討する必要がある.また両国の実験資料を併せてもそのデータ数は少なく,系統的な実験資料をさらに蓄積し,それらを統一的に分析する必要性がある.以上より,本年度は以下の因子を変化させたH形断面柱梁接合部の載荷実験を実施した.実験因子は,a)パネルと梁の耐力比(0.51-1.42),b)部分架構形式(十字,T字).c)梁フランジの溶接詳細(工場溶接,現場溶接),d)梁フランジのシャルピー吸収エネルギーの高低(32J,203J),の4種類で計11体の実験を行った.柱および梁の断面寸法はそれぞれ,H-350x350x10x15およびH-400x200x8x13で,鋼種は,SM490AとSN490Bの2種類である.本実験より得られた知見を以下に示す.1)接合部パネルの塑性化が梁の塑性変形能力に及ぼす影響よりも,接合部パネルの塑性変形量が,骨組の塑性変形能力の増大に及ぼす効果が大きい.2)梁フランジのシャルピー吸収エネルギーの高低が塑性変形能力に及ぼす影響は大きいが,その値が等しく,同程度の温度下で載荷された場合では,弱パネル形式の方が塑性変形能力が高い.
|