Research Abstract |
本研究は,(1)蓄熱と調湿の機能を有する建材(相変化熱を利用して蓄熱し,優れた吸放湿特性も有する潜熱蓄熱・調湿材)の開発,(2)居住環境の実測および数値シミュレーションによる高機能建材の効果解析,(3)高機能建材を利用した設計ガイドラインの提案を行い,断熱気密性能を高めた乾式構法で,しかも恒温性・調湿性に優れる高機能パッシブ住宅の計画開発を目的としている。 平成23年度は,床にPCM(潜熱蓄熱材)を敷設してダイレクト・ヒートゲインにより蓄熱を行うと同時に,深夜電力を使用して夜間にも蓄熱するハイブリッドPCM床蓄熱暖房方式を提案した。模型箱を使用した環境試験室実験,試験家屋を使用した屋外実験および数値シミュレーションにより,PCMの蓄熱および放熱特性,室内熱環境への影響,暖房負荷削減効果について明らかにした。得られた主な結果を以下に示す。 (1)模型箱実験により空気加熱および床加熱によるPCMの蓄熱および放熱特性を確認し,PCM蓄熱は室温変動を緩らげる効果があることを示した。(2)PCMを施工した実験棟では,昼間に日射熱を蓄熱することで,暖房負荷を最大で1日当たり9.6%削減できた。(3)PCM建材の施工により暖房時の室内水平温度分布を改善できること,コールドドラフトによる不快感を軽減できることを示した。(4)数値計算により,模型箱実験および屋外実験を再現し,数値シミュレーションソフトTHERBは高い精度で建築熱環境を予測できることを明らかにした。(5)数値計算により,暖房負荷の削減に影響するPCMの施工面積や容量について検討した。PCMを施工することでブランク棟に比べ,約1割の暖房負荷削減が見込めること,深夜蓄熱を行う場合でも昼夜の合計負荷は同程度になることを明らかにした。また,深夜料金時間帯に効果的に蓄熱を行うことで昼間の暖房負荷を低減できることを示した。
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