2011 Fiscal Year Annual Research Report
大航海時代ヨーロッパにおける都市計画理念の形成に関する研究
Project/Area Number |
21560666
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
杉本 俊多 広島大学, 大学院・工学研究院, 教授 (00127664)
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Keywords | 近世都市 / 都市構造 / 大航海時代 / 河岸 / 内港 / グリッドプラン / ドイツ / フランス |
Research Abstract |
大航海時代ヨーロッパのうち、今年度は3年間の総括を目して、比較研究の上で不足していた地域に着目した。すなわち、フランス、ドイツの歴史的な海港都市について実地調査することとし、都市を選定し、各都市について、都市構造の歴史的な変遷過程を分析し、また二次元・三次元復元を通して、都市内部の空間的な特性を抽出した。 1.フランスの海港都市ラ・ロッシェルについて、中世に段階的に形成されてきた痕跡を抽出し、自然発生的な水辺から延びる中世的な街路の地区、バスティードに比せられる平行街路網の地区を見出し、さらに近世のグリッドプランによる地区の形成過程について、その特性を明らかにした。近傍のロシュフォール、またマルセイユ、ボルドーとの比較を行い、フランス中近世港町の都市空間構造の変遷過程、特に内港型について総括した。 2.ドイツの海港都市ハンブルクについて、中世ハンザ都市としての港町の形成過程、交易機能の進化に伴う近世の新市街地を伴う都市構造の形成過程について、また船着き場の空間構造の発展過程とそれによって形成された内港地区、河岸のある外港地区について明らかにした。またグリュックシュタットの小規模な新都市について、イタリア由来で城塞理論家シュペエクリンの理論を経由した多角形・放射状プランとネーデルランドの影響下の水路網・グリッドプランの都市空間構造の合成される実態を明らかにした。ブレーメンのネーデルランド型についても比較した。 3年間の調査研究を総括して、大航海時代のヨーロッパ各国における海港都市の都市計画、都市空間構造は、イタリア理想都市論の影響を受けつつも、地域の伝統や地域性に条件付けられてきわめて多様であること、そして特にネーデルランドの、低地における水路網・グリッドプランに依拠する合理的都市計画手法と対比できることを明らかにした。
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