2011 Fiscal Year Annual Research Report
中井家所蔵資料の整理と公儀寺社造営における中井家の役割に関する研究
Project/Area Number |
21560667
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
谷 直樹 大阪市立大学, 大学院・生活科学研究科, 教授 (40159025)
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Keywords | 中井家 / 大工頭 / 公儀造営 / 寺社作事 / 近世建築史 |
Research Abstract |
京都大工頭の中井家は、江戸時代に五畿内及び近江の6か国の大工を支配し、同国内における公儀造営の設計・施工を家職としていた。近世を通して上方の建築界を主導した中井家の解明は、近世建築史の重要な研究テーマである。本研究計画では、中井家の当主である中井正知氏の所蔵資料を整理・編集し、その成果に基づいて、寺社における公儀作事の実態を、中井家と中井役所、寺社方、大工組の3つの側面から解明することを目的としている。 中井家資料の整理については、前年度に作成した7,567点の資料目録をもとに、文化庁が編集した目録によって、平成22年6月に「大工頭中井家関係資料」の名称で、5,195点が国の重要文化財(歴史資料)に指定され、研究代表者が館長をつとめる大阪市立住まいのミュージアムに収蔵庫に保管されている。 公儀寺社作事については、大坂の陣後に復興された大坂の寺社について、四天王寺と住吉大社を事例に検討した。その結果、大坂の陣後の元和年間に復興された四天王寺の伽藍は、中井家2代目の正侶と後見人の中井利次が差配し、配下の大工棟梁を派遣したことが明らかになった。また住吉大社に関しては、明暦2年の遷宮で、中井家3代目の中井正知が大工を勤め、配下の棟梁・茂左衛門を大坂に派遣し、設計・見積を担当させ、実際の工事は大坂の大工・新左衛門が行っている。宝永6年は大坂御大工の山村与助が大工を勤めており、与助は翌年に中井家4代目の正豊を名乗って、中井家を相続している。すなわち、江戸時代初期の大坂の代表的な建物、大坂城、四天王寺、住吉大社の建築は、中井家の2代正侶、3代正知、4代正豊が深く関与していたことが明らかになった。
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