2011 Fiscal Year Annual Research Report
近世町家の形成と多様な形式の発生要因-オランダ商館長などの記録を基礎史料に-
Project/Area Number |
21560671
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
波多野 純 日本工業大学, 工学部, 教授 (40049721)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 憲治 日本工業大学, 工学部, 助手 (30337513)
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Keywords | 町家 / 町家模型 / オランダ商館 / 近世 / 絵画史料 / 長崎 / ブロムホフ / シーボルト |
Research Abstract |
本研究は、西欧人の目という新たな視点から、近世町家の多様な形式の形成要因を明らかにすることを目的とする。具体的には、長崎出島のオランダ商館長などが遺した記録(日誌、模型など)を基に、日本の町家の地方的・地域的特質を、従来とは異なる目で分析する。 オランダのライデン国立民族学博物館に所蔵されている日本の町家等の模型は、実際の町並みを切り取ったのではなく、代表的な町家を組み合わせていた(18~20年度科学研究費)。 21、22年度は、シーボルト関係文書の一つである「1826年9月15日小瀬戸への調査旅行」(以下、日誌)を分析・検討した。また、日誌に関連する模型を調査した。日誌は、シーボルト『日本』の挿図(以下、『日本』)、模型と対応関係にあった。また、日誌に記録された民家の一つは、長崎市小瀬戸に存在していた漁業と農業を営む民家で、「農家」模型と一致した。23年度は、これまでの成果を基に模型のモデルとなった地域を検討した。 モデルとなった地域の検討 「農家」模型以外に、『日本』と対応関係にある模型は10件ある。これらの模型の特徴を、『長崎県の民家』に掲載されている民家や長崎市内に現存する遺構、古写真等と比較し、模型の特徴とよく一致することを確認した。また、「名主の住まい」模型は、かつて長崎市内に存在したオランダ通詞の町家と酷似した。 シーボルトの見た長崎の町家 『日本』と対応関係にある模型は、長崎の町家をモデルとした。それらは、シーボルトが実見した町家である。 模型は、日本人の職人によって正確に製作され、外観の特徴ばかりでなく、正式な部屋には長押を廻し、襖の仕上を唐紙と襖絵に使い分けるなど、部屋の格式や用途によって室内意匠が異なることを正確に表現している。 現存町家遺構が歴史的な増改築の結果であるのに対して、模型からは19世紀初頭の長崎の町家の正確な様相を理解することができる。
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Research Products
(1 results)