2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21560672
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
黒津 高行 Nippon Institute of Technology, 工学部, 教授 (20215114)
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Keywords | 関東 / 彫刻屋台 / 建築技術 / 架構 / 彫刻装飾 |
Research Abstract |
関東の屋台には精巧な彫刻を施したものが多く、彫刻屋台は、建築学上、彫物師や近世社寺建築との関連を探る上で極めて興味深い対象である。とりわけ上州の彫刻屋台には、江戸型屋台の古式を留めたものが現存しており、天下祭と祭礼文化の伝播を総合的に検討する上で新資料をもたらす可能性が高い。しかし、彫刻屋台の実態把握の全容解明は未だ進んでおらず、屋台の基礎的データが十分に得られていない。この研究では、現地調査による実態把握を基に、屋台の架構形式の分析を行い、関東に展開する彫刻屋台の建築技術の特質を明らかにすることを目的とする。 本年度は、利根川中流域のうち、日光例幣使道沿いの群馬県南部を踏査した。結果、旧玉村宿の彫刻屋台は幕末に製作された旋回式の踊り屋台で、日光例幣使道沿いの現存屋台唯一の架構形式をもつ。祗園祭礼屋台行列にみる踊り屋台とは異なる形式と認められ、玉村八幡宮の社殿整備に関与した大工や彫物師および大祭との関連などが明らかになった。また、前橋地区についても踏査し、伊勢崎波志江地区でみられた雨乞い屋台と類似する彫刻屋台や、前橋城下の旧向町屋台の部材を発見した。構造材は消失しているものの破風板や彫刻部材が残っており、絵巻物に表現された前橋祗園祭礼屋台の遺構を初めて確認した。 群馬県南部の現存屋台においては、前橋城下での祗園祭礼行列に登場する文政期の屋台、これまで明らかにしてきた水不足地区の集落に展開した幕末期の雨乞い屋台、宿場町で曳き出された幕末期の屋台など、彫刻屋台の系譜を探る上で有用な資料を得た。
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