2009 Fiscal Year Annual Research Report
伝統都市における都市空間の分節構造に関する研究-日本と台湾の比較-
Project/Area Number |
21560674
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
伊藤 裕久 Tokyo University of Science, 工学部・建築学科, 教授 (20183006)
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Keywords | 伝統都市 / 都市空間 / 分節構造 / 日本 / 台湾 |
Research Abstract |
本年度の調査研究では、まず、台湾における伝統都市・集落の分節構造を分析するための都市史・建築史に関する文献資料・地図資料の収集を行い基本的なデータを蓄積し整理した。また、台湾について街並・寺廟の現地調査を実施した。調査対象としたのは、台北・大渓・三峡・新竹・湖口・鹿港・台南・安平の本島諸都市および金門島の都市・集落群(金城・水頭・欧〓・珠山・山后・浦邊等)である。 それぞれの都市・集落において、現状の歴史的建造物群のマッピング調査や写真撮影を行い、とくに湖口・鹿港・台南では、(1)街区内に形成された路地形態の現存状況、(2)寺廟の分布、(3)街並の連続ファサード図を作成し、都市空間の分節構造を考察した。 宗族的結合をもつ中国移民の都市・集落であった台湾の伝統都市・集落では、街区や集落の形成過程において、宗祠(祖廟)を中心とした宗族(同一姓氏)が住居集合の基本単位となること、さらに移民社会であることから、泉州・福州・同安・樟州・潮州など同郷出身者を単位として街区を形成し、角頭廟など同一の寺廟を信仰する領域を形成すること、それらの寺廟をネットワークするように路地群が形成されたこと、などが判明した。また、こうした集住単位を分節するための物理的な境界として「隘門」の存在が、重要な意味をもつことが推測できた。 一方、日治期の近代化過程では、「市区改正計画」によって主要街路に面する表側の街並景観に大きな変容がもたらされ、亭仔脚(アーケード)付街屋の形成などがみられるが、裏側では伝統的な空間構造が継承されており、この表と裏の二重構造あり方こそが分節構造の特徴となっていることが分かった。あわせて台南では、旧末広町において複数の日本人地権者の共同による店舗付集合住宅=「共同建築」の建設がなされており、現存する建築遺構について写真撮影と資料を収集し、分析を加えた。日本における共同建築との比較などは今後の課題である。 なお、日本については、戦国期に設置された関所を核として行成された上芦川町(山梨県笛吹市芦川町)を事例として集落形成・変容過程を考察し、伝統的な集落の分節構造を明らかにしている。
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Research Products
(3 results)