2010 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本住宅史における「田舎」への志向に関する研究
Project/Area Number |
21560677
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Research Institution | Tokoha Gakuen University |
Principal Investigator |
土屋 和男 常葉学園大学, 造形学部, 准教授 (60333259)
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Keywords | 建築史・意匠 / 近代和風 / 田舎家 / 益田鈍翁 / 仰木魯堂 |
Research Abstract |
1、 高橋箒庵による『昭和茶道期』の茶会記録に基づいて作成したリストを、既に集計済みであった『東都茶会記』『大正茶道記』のデータと比較しつつ発表した。本研究と関連の深い別荘での茶会等の件数に関しては、次のような結果が得られた。1)昭和初期に別荘地での茶会等が増加している。2)東京圏の別荘地のうち、海浜別荘地では小田原の益田孝別邸、掃雲台が多数を占めている。近代数寄者の代表的存在であった益田鈍翁の本拠地が東京から小田原に移ったことが茶会等の開催場所に影響している。3)東京圏の別荘地のうち、高原別荘地では軽井沢の益田多喜別邸が多数を占めており、これも鈍翁の影響と見ることができる。別荘地における茶会等は鈍翁がリードしたと見てよい。 2、 益田鈍翁小田原別邸・掃雲台の敷地、建築物、景観の復元的考察について、現地調査と資料の読込を進め、この結果を発表した。資料間の比較、異同の考察、地図、図面と実際の敷地との比較等の過程を詳述した。この調査は引き続き継続する。 3、 前年度に実施した木村久寿弥太(三菱グループ総理事)が伊豆河津に建設した別邸について所見をまとめた。これに基づき、本年度に登録有形文化財としての答申を得た。この別荘が建てられた当時、近代数寄者の間では「田舎家」が流行していたが、同時に洋風と和風を違和感なく融合した別荘も好んで建てられた。当該建築物に見られる山荘風の外観等はこうした傾向を示している。当時における富裕層の「田舎」への志向の表現として興味深い。 4、 「田舎家」以外の近代和風建築で「田舎」への志向を表すものとして、大倉和親(日本陶器社長等)が興津に建設した別邸の実測調査を実施した。前項3のタイプの住宅とともに、「田舎家」の位置づけを理解する事例である。
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Research Products
(2 results)