Research Abstract |
高エネルギー粒子の照射を受ける原子炉材料や核融合炉材料では,内部のナノスケール程度の領域に、多くのはじき出し欠陥が生成する.そうした格子欠陥は,熱活性化過程により拡散するので,照射の影響は時間とともに徐々に材料全体にひろがっていく.このとき,たとえば原子空孔どうしが集合化すると,ボイドと言われる空洞(直径ナノ~マイクロメートル)が,また,格子間原子どうしが集合化すると転位ループとよばれる格子間原子集合体が作られる.このようなミクロ構造変化は,材料の寸法安定性や機械特性に大きな影響(劣化)を及ぼすので,照射による材料ミクロ構造変化を予測することは,照射下で使われる材料の寿命評価・健全性評価に重要である.特に,実物が存在しない核融合炉においては,炉設計に必要となる材料照射特性の評価に,代替照射施設(中性子エネルギースペクトルや温度などの照射条件の異なる核分裂炉やイオン加速器など)を用いることになるが,このとき,それら代替照射施設をいかに用いれば,実際の核融合炉環境下の材料挙動を予測することができるかの方法論が必要になる,これには計算機シミュレーションを用いたモデリング研究が有効である. 本研究計画2年目であった平成22年度においては,欠陥集合体形成の反応速度式をモンテカルロ法を使って積分することにより,集合体の核生成をうまくモデル化することができた.その結果,たとえば,タングステン材料中のボイド核生成の照射速度(dpa/s)依存性を明らかにするとともに,従来の核生成モデルの問題点を明らかにすることができた.さらには,ヘリウムバブルの核生成モデルやSiC材料中のボイド核生成のモデルを提案することができた.
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