2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21560686
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
荒河 一渡 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 准教授 (30294367)
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Keywords | 電子顕微鏡 / 転位 / 照射損傷 |
Research Abstract |
原子炉・核融合炉材料の寿命予測および新規開発のためには、照射損傷の要素過程である格子欠陥の挙動を正しく理解する必要がある。これまでに、本研究代表者らによって、金属中のナノメートル・サイズの転位ループは、熱エネルギーによって、そのバーガースベクトルの方向へ一次元すべり拡散を行うことが明らかにされている(K.Arakawa et al., Science 318 (2007) 956-959)。本年度は、二つの転位ループ同士の一次元すべり拡散による衝突と合体の過程を超高圧電子顕微鏡および汎用の透過型電子顕微鏡を併用して直接調べた。 試料には高純度鉄を用いた。まず超高圧電子顕微鏡内での電子照射により、薄膜試料へ転位ループを導入した。この試料を汎用電子顕微鏡へ移し、加熱下での転位ループの挙動を観察・記録した。転位反応に関する従来の描像では、異なるバーガースベクトルb_Aおよびb_Bを持つ二つの転位同士が衝突すれば、b_J=b_A+b_Bなるバーガースベクトルb_Jを持つ転位ジャンクションが形成され、そこで反応は終了するとされてきた。これに対し、本研究では、ナノメートルサイズの微小な転位ループにおいては、ジャンクションの形成後も更に反応が進行し、小さい方の転位ループの面内をジャンクションが伝播してしまうことによって、最終的には、より大きい転位ループがより小さい転位ループを吸収してしまうことが明らかにされた。また、この反応は、転位ループ複合体の弾性論に基づくエネルギー計算によっても理解された。 本研究で得られた知見は、特に、欠陥同士の相互作用が無視できない高照射量条件における、照射下微細組織発達過程を理解する上でのキーの一つになると考えられる。
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