2011 Fiscal Year Annual Research Report
超伝導/常伝導積層構造薄膜における従来理論から予測できない臨界温度変化の機構解明
Project/Area Number |
21560689
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土井 俊哉 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (30315395)
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Keywords | 超伝導 / 超電導 / 二ホウ化マグネシウム / MgB_2 / 臨界温度 / T_c |
Research Abstract |
我々は、金属間化合物超伝導物質MgB_2にO抵抗で流すことができる電流密度(J_c)を向上させるために、MgB_2に様々な物質のナノレベル構造体(粒子や層)を挿入して、MgB_2内部に侵入する量子化磁束線のピン止めについて研究を行ってきた。その中で、MgB_2/NiおよびMgB_2/B多層膜において超伝導転位温度(T_c)がMgB_2層厚の逆数に対して直線的に減少するという奇妙な現象を発見した。この現象は従来の超伝導理論では説明することができなかった。 昨年度は,基板が異なるとMgB_2薄膜のT_cが異なることを明らかにした。このことは,結晶の成長初期過程がMgB_2薄膜のT_cに影響を与えている可能性を示している。そこで本年度は,厚さの異なるMgB_2薄膜を作製して,そのT_cを評価したところ,膜厚を厚い試料のT_cが薄い試料のT_c,より高くなることが明らかになった。また試料の断面を透過型電子顕微鏡で観察したところ,基板界面では結晶粒径が非常に小さく,基板から離れるに従って結晶粒径が増加することが分かった。これらの結果から,MgB_2薄膜のT_cに結晶性が影響している可能性が示唆される。しかしながら,MgB_2/Ni多層膜の断面透過型電子顕微鏡観察結果ではNi層を挟んで上下のMgB_2結晶に結晶性の違いは認められないことから,T_cの決定要因にはまだ未知の原因も絡んでいるものと考えられる。また,本研究の研究に関連してAl基板上に結晶粒径を小さく抑えて作製したMgB_2薄膜のJ_cが10Kにおいて10MA/cm_2と非常に高いことを見出した。この値は新しいタイプの超伝導線材の可能性を拓く結果であり,実用化に貢献する価値ある結果であると考えている。
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