Research Abstract |
B_2O_3フラックス処理による結晶相析出のメカニズムを調べるため,走査型電子顕微鏡を用いて析出結晶相の形態等の観察を,そしてエネルギー分散形X線分光による組成分析を行った。析出した結晶相は,フラックス鋳造材(フラックス処理を行った直後に鋳造),フラックス未処理材共に,α-Fe(-Si)相とFe_2B相であることが,組成分析の結果により確認された。しかしフラックス未処理材では,結晶相からAlやCaなどの不純物元素も同時に検出されており,結晶相はこれらの酸化物などによる不均質核生成により,主として試料表面付近に析出していることが確認された。それに対しフラックス鋳造材では,フラックス処理により不均質核生成サイトとなる酸化物などが除去された結果,結晶相は主として均質核生成により試料内部に析出するものと考えられる。 また結晶相の析出個所及び析出量と,磁化曲線の形状との関係を調べた結果,試料表面付近に結晶相が析出した場合(フラックス未処理試料の特徴)では,ガラス単相試料と類似した磁化曲線しか得られないことが確認された。それに対しフラックス鋳造材では,結晶相の析出量が少量であっても透磁率が大幅に低下し,恒透磁率特性が発現することが確認された。同時に,結晶相の析出量が増えるに連れて,透磁率の低下が緩やかになり,保磁力が著しく増加することも判明した。 またフラックス鋳造材に熱処理を施すと,保磁力はほぼ一定のまま,恒透磁率が得られる磁場の範囲が広がることが確認された。前述の結晶相の析出個所や析出量と磁気特性との関係を合わせて考えると,結晶相析出による透磁率低下のメカニズムは,析出結晶相に起因する内部応力ではなく,析出結晶相による磁壁移動のピン止め効果によるものだと考えられる。
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