Research Abstract |
複数の結晶学的金属イオンサイトを持つ遷移金属複酸化物として2Hペロブスカイト型Ca_3Co_2O_6とダブルペロブスカイトLn(Co,Ru)O_3(Ln:希土類)の多結晶体を作製し,熱電特性を評価した.Ca_3Co_2O_6多結晶体(見かけ密度約95%)は空気中で予備焼成したペレット(同約70%)をプラズマ放電焼結(SPS)して得た.SPS多結晶体試料は粒界抵抗とランダムな結晶方位配列(高抵抗なa-a結晶面と低抵抗なc軸方向の結晶粒が混在)により,単結晶(c軸方向)よりも約1桁,電気抵抗率が高い.He雰囲気中で測定された800KにおけるSPS試料のゼーベック係数は200μVK^<-1>,電気抵抗率は約0.24Ωcm,出力因子は約1.6×10^<-5>Wm^<-1>K^<-2>であった.このSPS試料を空気中で測定したところ,特に室温から約600Kにおけるゼーベック係数,電気抵抗率がいずれも大きく減少した.Ca_3Co_2O_6多結晶体の電気的性質ははわずかな酸素不定比量で増減する正孔-電子両キャリアの影響を大きく受ける.Ln(Co,Ru)O3多結晶体は大気中,1673Kで固相反応法により合成され,Ln=La,Pr,Ndに加え,新たにLn=Y,Sm,Eu,Gd,Hoが存在することを明らかにした.電気伝導率は温度とともに上昇し,298~1073Kの間で熱活性型の半導体的挙動を示した.1073Kにおける電気伝導率値は3.6~8.2S・cm^<-1>の範囲であった.ゼーベック係数は298~1073Kの測定温度領域で正の値をとり,正孔が優勢キャリアであった.ゼーベック係数値は温度上昇とともに減少し,1073Kにおいて+72~+79μVK^<-1>となった.出力因子は温度とともに増加し,1073KにおいてLn=Euの試料で最大値4.3×10^<-6>Wm^<-1>K^<-2>であった.
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