Research Abstract |
複数の結晶学的金属イオンサイトを持つ遷移金属複酸化物として2Hペロブスカイト型Ca_3(Cu,Rh)_2O_6の単結晶体作製を試み,合成条件と生成相の関係,ならびに,熱電特性を評価した.また,スピネル型Co_<3-x>Ru_xO_<4-d>の電子状態計算を行い,熱電特性に影響を及ぼすキャリアの挙動について検討した.炭酸カリウムをフラックス剤として用い,保持温度920℃,保持時間48h,冷却速度-100℃/hの条件で長さ1~8mm,太さ0.05~0.3mm程度の六角柱状Ca_3(Cu,Rh)_2O_6単結晶が得られた.保持温度1050℃,保持時間24h,冷却速度-15℃/hの条件では,辺長1mm以下の角状Ca_2CuO_3やRh系酸化物などが生成し,Ca_3(Cu,Rh)_2O_6は得られなかった.単結晶の伸張方向におけるゼーベック係数(S)と電気抵抗率(ρ)の温度依存性から,Ca_3Cu_<0.97>Rh_<1.03>O_6単結晶は測定温度範囲において半導体的挙動を示し,室温から約653Kまでは優勢キャリアが電子(n型),653K以上では優勢キャリアが正孔(p型)であることがわかった.出力因子(S^2ρ^<-1>)の最大値はn型領域では9.1×10^<-7>Wm^<-1>K^<-2>(523K),p型領域では4.2×10^<-5>Wm^<-1>K^<-2>(1073K)であった.[Co_<24>RuO_<38>]^<-9>クラスターモデルで計算されたCo_<3-x>Ru_xO_4の電子状態計算の結果はRu-O結合,Co-O結合のいずれも共有結合性が高いことを示した.RuおよびCoが供与する電子数は1.3~1.5個程度であり,結晶内においてRu^<2+>,Ru^<3+>,Ru^<4+>,Co^<2+>,Co^<3+>,Co^<4+>が共存する複雑な混合原子価状態である可能性が示唆された.ゼーベック係数のbimodalな温度依存性はこれらの混合状態に起因する各サイト間の電子交換反応と不均化反応によるといえる.
|