2010 Fiscal Year Annual Research Report
応用展開のためのカーボンナノチューブ-アルミナ複合材料の研究
Project/Area Number |
21560709
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大森 守 東北大学, 大学院・工学研究科, 技術補佐員 (30005954)
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Keywords | カーボンナノチューブ / 複合材料 / アルミナ / 水酸化アルミニウム / 放電プラズマ焼結 |
Research Abstract |
カーボンナノチューブーアルミナ複合材料に関して、これまでに多くの報告があるが、高強度で製品にできるような性能のものは合成されてこなかった。これまでの報告を検証した結果、カーボンナノチューブを微細な形でアルミナ中に分散することができなかったため、機械的性能が悪く製品化が不可能であったと判断した。本研究では、カーボンナノチュニブを微細に分散し、優れた機械的性能を持つ複合材料の製造するため、二つの新しい試みを行なった。一つは原料にアルミナ粉の変わりに、その前躯体である水酸化アルミニウムを使用した。二つ目に多層カーボンナノチューブ(MVNT)をグラフェン層の厚さから肉厚と肉薄とに分類して分散性を調べた。水酸化アルミニウムとの混合において、肉厚MVNTは剛性が大きくて凝集しにくく分散性の良いことが分かった。さらに剛性の小さい肉薄MVNTでも、数ある製品の中には分散性の良いもののあることも分かった。この二つの結果から、カーボンナノチューブをアルミナ中に微細に分散できるようになった。試料の焼結は放電プラズマ焼結法によっているが、無加圧焼結法を適用する研究も行なっている。5maa%のカーボンナノチューブを含む複合材料でも400MPa以上の強度があり、工業製品の水準を満たす複合材料を得ることができた。靭性も市販のアルミナ粉から得られた焼結体より大きいことが分かった。この複合材料は電磁波吸収に優れ、3mmと短い試料でも電子レンジ中での数秒間の電磁波照射により赤熱される。この現象から電磁波吸収材料やアンテナへの応用期待できる。さらに、複合材料の表面に黒鉛結晶をこすり付けると、黒鉛膜が形成される。複合材料中のカーボンナノチューブと黒鉛がファンデルワールス力により結合されるため、はがれにくい黒鉛膜が形成されると考えている。この黒鉛被覆複合材料の摩擦係数は0.1と小さため、これを自己潤滑ベアリングや人工股関節のカップへの応用が期待できる。
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