Research Abstract |
種々の官能基を含んだ酸,アルカリ水溶液中でTiを陽極酸化することにより,化学的性質の異なるTiO_2皮膜を作製し,これを動物埋植試験に供することにより,骨伝導性の高いTiO_2皮膜作製条件を決定するとともに,TiO_2皮膜表面の化学的性質と骨伝導性との相関関係を明らかにすることを目的とした.使用した水溶液種として,(1)リン酸,(2)硫酸,(3)水酸化ナトリウム,(4)ギ酸,(5)酢酸,(6)アンモニア水,(7)サリチル酸,(8)乳酸の8種を選定し,これらの水溶液中で,表面粗さRa<0.1μmで,およそ100nm程度の膜厚を有するTiO_2(アナターゼ)皮膜を作製し,試料表面の化学的特性評価(静的水滴接触角測定,37℃,PBS(-)中自然電位測定,含有官能基の定性分析,たんぱく質吸着量測定)を行うとともに,ラット脛骨埋植試験によるin vivo評価も行った.その結果,たんぱく質吸着能を有するリン酸ならびに硫酸中にて陽極酸化して作製したTiO_2コーティング材が,高い骨伝導性を示した.しかし,たんぱく質の有するアミノ基と結合することによって高い吸着能を示すと考えられたカルボキシル基,水酸基などを含有する水溶液中((3)(4)(5)(6)(7)(8))で作製した皮膜は,高い骨伝導性を示さなかった.表面の化学的特性評価として行った皮膜のたんぱく質吸着量測定の結果も,このことを支持したものとなっているが,今後,水溶液中の溶質濃度や電解電圧,温度等を変化させることによって,同一の水溶液を使用して異なる化学的性質を有する皮膜を作製し,さらなる検討を行う必要がある.
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