Research Abstract |
歯根や骨ねじなどのインプラント材表面の骨伝導性を高める表面処理法として,水酸アパタイトやTiO_2のコーティングが注目を集めている.申請者らのこれまでの研究によって,TiO_2コーティングの方が,骨の無機主成分である水酸アパタイト・コーティングよりも高い骨伝導性を示す場合があることを動物埋植試験により見出してきた.本研究では,これまでに明らかにしてきた結果を踏まえて,陽極酸化法に用いる水溶液の種類,すなわち含有するイオンや官能基の異なるTiO_2コーティングを作製し,これらの含有イオン,官能基と骨伝導性の関係に焦点を絞り研究を行った.具体的には,種々の官能基,アニオン,カチオンを含んだ無機酸,有機酸,アルカリ水溶液中でTiを陽極酸化することにより,これらのアニオンやカチオンを含有し,化学的性質の異なるTiO_2皮膜をTi表面に作製し,これを動物埋植試験に供することにより,骨伝導性の高いTiO_2皮膜作製条件を決定するとともに,TiO_2皮膜表面の化学的性質と骨伝導性との相関関係を明らかにすることを目的とした. その結果,TiO_2皮膜に含まれるアニオンやカチオン,官能基の骨伝導性への影響はほとんどないことがわかった.その一方で,アニオンやカチオン,官能基を含有するTiO_2コーティングの骨伝導性は,インプラント表面の親水性・疎水性(水滴接触角)に極めで強い影響を受けて変化することがわかった.すなわち,親水性表面ほど高い骨伝導性を示した.よってこの事実から,インプラントの生体活性評価法として,工学的評価法のひとつである「水滴接触角」測定が,動物埋植試験に代わる安価で有用かつ簡便な手法,すなわち骨伝導性材料開発の「道しるべ」になりうるものと考えられる.
|