2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21560723
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
浅野 貴行 Kyushu University, 大学院・理学研究院, 助教 (00301333)
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Keywords | モリブデン酸銅 / クロミズム / 構造相転移 |
Research Abstract |
1.設備備品として購入した高温電気炉を用いて良質なモリブデン酸銅の粉末試料の作製を行った。その粉末試料の磁気的性質を明らかにするため現有施設の磁化測定装置を用いて磁化率の温度依存性の測定を実施し、これまでX線回折実験によって報告されている約190Kでの構造相転移に起因する巨大な磁化の温度履歴現象を観測した。即ち、モリブデン酸銅の構造相転移に伴う(サーモ)クロミズム現象と磁気的性質には大きな相関があることを証明する重要な結果が得られた。また常磁性状態からの磁気相転移の有無を調べるため最低温度0.5Kに至る比熱測定を行い、1.76Kに三次元磁気秩序を示唆する異常が観測された。さらに極限環境下の磁気的性質として最大磁場60Tまでの強磁場磁化測定を実施し、飽和磁化の1/3に相当する磁化プラトー現象と約30Tにおいて磁化が飽和することを確認することができた。以上の良質な粉末試料における測定結果より可能な磁気構造のモデルとして二量体-単量体モデルを提唱し、常磁性状態(4.2K)における磁化過程の結果を再現することに成功した。しかし、構造相転移に伴う巨大な磁気的性質の異常を説明するに至っておらず来年度以降の研究課題である。2.浮遊帯域法(Floating Zone : FZ)を使用したモリブデン酸銅の大型単結晶試料の作製に世界で初めて成功した。その単結晶試料における磁化率の温度依存性の結果、粉末試料と比較してシャープな構造相転移の異常を観測するに成功した。来年度以降、この単結晶試料を用いた詳細な磁気的性質の実験的研究を推進する計画である。3.ピエゾクロミズムの観測として外部からの圧力印加ではなく不純物を添加することによる内部からの圧力(ケミカルプレッシャー)を誘起する試みとして、モリブデンイオンよりイオン半径の大きいタングステンイオンへの置換試料の作製を実施し巨視的測定を開始した。
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Research Products
(2 results)