Research Abstract |
本年度は,引き続き界面修飾層と磁性誘電体物質の最適化に取り組んだ.また,これらの取り組みと並行して,昨年度得た集束イオンビーム装置を利用したナノスケールデバイス構造の構築技術を用いデバイススケールでの物性評価並びに機能発現をめざした取り組みを実施した. 前年度に取り組んだヘテロ界面制御手法を用いた物性の最適化については,エピタキシャル成長条件と物性の最適化条件のトレードバランスを取ることが困難であり思うような進展がみられなかった.このため,新たなバッファー層として炭化物層の可能性を検討した.Si基板の最表面に化学気相反応法によって,緻密なSiC薄膜を得ることに成功した.このSiC薄膜は(100)もしくは(111)配向状態で得られており,これに局所申請者らが開発中のBa-Fe系磁性誘電体をエピタキシャル成長させることにより,強磁性秩序の発現と誘電特性が両立する期待ができる.一方で,磁気秩序の発現には,界面のミスフィット歪が重要な役割を担うことが明らかとなっていることから,Fe置換元素をSnとした,Ba(Fe,Sn)03-delta系薄膜の作成も試みた.その結果,これらの薄膜が,室温強磁性と優れたリーク特性を示すことを示した,一方で,磁化の大きさは従来のBa(Fe,Zr)03-delta系薄膜より小さく,現在ミスフィット歪を誘起し磁気モーメントを増大することを試みている.また,成膜後のポストプロセスで格子欠陥を導入し磁性制御を行う取組も同時に実施し,絶縁体CeO2薄膜においてイオン照射後強磁性秩序が得られることなどを発見し,新規磁性誘電体探索に有効な方法であることを見出した. また,集束イオンビーム装置を用いたナノデバイス構造の新たな構築手法の開発実験においては,例えばサブミクロンサイズのリング状パターンを極めて短時間に大面積に作製する手法を開発するなどの成果を得た.今後,デバイス構造作成プロセスへ応用する予定である.
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