2011 Fiscal Year Annual Research Report
欠陥・組成制御した環境共生型マグネシウム系熱電材料の高性能化
Project/Area Number |
21560732
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
磯田 幸宏 独立行政法人物質・材料研究機構, 電池材料ユニット, 主任研究員 (80354140)
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Keywords | Mg_2SiSn / 熱電変換 / 置換型欠陥 / 粒界効果 / 熱電特性 / 伝導機構 / 熱起電力 |
Research Abstract |
Mg_2SiSn系熱電半導体における元素置換による置換型欠陥導入により生成するキャリアの輸送特性と伝導機構の解明と熱電特性への影響を調べるためにMg_2Si_<0.25>Sn_<0.75>組成にMgとの置換元素としてLiとAgを二重添加した化合物を液-固相反応合成法とホットプレス法を併用して作製した。総添加量を25000ppmとし、AgおよびLi単独添加試料とLi5000ppmとAg20000ppmおよびLi20000ppmとAg5000ppm二重添加した試料を準備した。得られた合成物はXRD解析から全て単相であることがわかった。無添加試料の比抵抗は5.27×10<-3>Ωmと大きいが、単独添加試料の比抵抗はLi添加で3.84×10<-5>Ωm、Ag添加で2.78×10<-5>5Ωmと二桁も減少し、二重添加した試料では2.46×10<-5>ΩmとAg単独添加試料に比べて僅かなに低減した。これはキャリア濃度がAg単独添加と同程度あることが原因で、二重添加による置換型欠陥の影響は認められない。ゼーベック係数は全温度領域で正の符号を示し、p型伝導である。二重添加試料のゼーベック係数もAg単独添加試料に比べて僅かに減少した。熱伝導率はAg単独で2.32Wm^<^1>k^<-1>が一番小さく、次に無添加試料の2.39で、Li単独添加が2.65と一番大きい。二重添加ではLi20000ppm+Ag5000ppm試料が2.48、Ag20000ppm+Li5000ppm試料で2.40と無添加試料より僅かに大きくなった。二重添加した原子は、両方ともにMg原子位置と置換しており、Mg原子と置換した原子の原子量や原子径の違いが熱伝導率のフォノン成分に大きく影響することがわかった。また、真性領域の温度域ではバイポーラ成分によって熱伝導率が急激に増加する。熱電性能指数の温度依存性は約500Kで最大値を示し、Ag20000ppm+Li5000ppm試料で0-55×10^<-3>K^<-1>であった。二重添加した試料の熱起電力の温度依存性は温度差の増加に伴って単調に増加した。熱起電力の最大値は約98mVであった。出力特性は最大で温度差が約500Kで82W/mと単独添加に比べて約37%も向上した。さらに結晶粒界が熱電特性に及ぼす影響を調べるために結晶粒径の違う試料を準備した。75~38μm粉末で作製した焼結体試料の室温におけるゼーベック係数は、-189と-159μV/Kであった。一方、38μm以下の粉末で作製した焼結体試料では、341と34.57μV/Kを示した。室温における熱伝導率は75~38μm粉末焼結体試料ではゼーベック係数が異なっていても約2.42W/Kmで一致していた。しかし、38μm以下粉末焼結体試料では約2.30と約2-23W/Kmとわずかに小さくなった。全ての試料のゼーベック係数は80Kでp型を示し、p型からn型に転移する温度は75~38μm粉末の948Kで焼結した試料は約155K、928Kで焼結した試料では約195Kであった。一方、38μm以下粉末では928Kで焼結した試料は約341K、焼結温度を873Kに下げた試料では、422Kであった。この転移温度の変化は結晶粒径に依存しており、結晶粒界によるバンド歪みによってトラップ準位が形成されることがわかった。このトラップ準位によって電子が粒界にトラップされ、温度上昇に伴って正孔と電子が増加するが試料内における正孔と電子の比率が変化するため、伝導型が変化することがわかった。粒界欠陥でゼーベック係数の増加は認められるが、比抵抗の増加により、熱電性能の向上は認められない。p型Mg_2SiSn系熱電半導体における性能向上には欠陥制御は有効であることが示された。
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Research Products
(15 results)