Research Abstract |
放電加工法は,異なる3つの現象,(1)放電パルス幅(ns,μs),(2)溶融表面の凝固現象(ms),(3)気泡の発生と消滅(s)が同時に発生し,しかもそれぞれの時間スケールが大きく異なる。これらの現象を個別に制御することは極めて困難であり,このことが不安定な放電状態を引き起こすと考えられる。これまでの計測結果から,放電発生から十数ms後に40μmに及ぶ盛り上がり現象を確認した。この結果は,加工後の盛り上がり現象が,短絡の原因となる可能性があることを示している。よって,現在起こっている放電とは無関係な場所で,この盛り上がりによって短絡が発生する可能性があり,現状の放電加工における主軸の制御方法ではこれを検知できていないことになる。これを検知するための対策はまだ無く,今後の課題となっている。 一方,放電直後の盛り上がり現象によって被加工物と電極が接触するということは,これは異種金属接点による温度計測に応用できる可能性がある。温度計測の試みとして,アルメル,クロメル材料を対極させ,橋絡現象が起こると想定される電気条件,極間距離を意図的に設定し,放電後の溶融によってこれらの材料を接触させ,このときの起電力を測定した。この結果,放電直後に起電力が測定され,序々に起電力が低くなる現象が観察された。計測された放電直後の起電力は,アルメル,クロメル熱電対の測定可能な最高温度に相当し,その後指数関数的な減少傾向を示した。このことから,放電後の材料の冷却過程の温度が計測できた可能性が高いと考えられる。
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