2011 Fiscal Year Annual Research Report
物理気相蒸着法により作製したガス吸着膜の特性解明とガス検知センサへの応用
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21560744
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
岩森 暁 東海大学, 工学部, 教授 (90345603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 和俊 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理技術研究部門, 主任研究員 (60357746)
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Keywords | 有機薄膜 / QCM / 高周波スパッタリング / ガス吸着速度 / センサ感度 |
Research Abstract |
本研究では、高周波スパッタリングやプラズマ支援真空蒸着法などの物理気相蒸着法(PVD)法により有機薄膜を水晶振動子上に形成し、微量濃度のガス分子の吸着性や原子状酸素などとの反応性を調べ、有機薄膜の吸着現象や反応メカニズムを解明すると共に、微量濃度の揮発性有機化合物(VOC)ガスや酸化性活性化学種などの検知用センサを開発することを目的とする。具体的には、QCM(Quarz Crystal Microbalance)法を応用し、QCMの電極上に高周波スパッタリングやプラズマ支援真空蒸着法により形成した有機薄膜を形成し、微量濃度のガス分子の吸着性の検討を行っている。平成23年度は、ポリテトラフルオロエチレンをターゲットとして、PVD法の一種である高周波スパッタリングにより形成したフッ素系有機薄膜(フッ化炭素薄膜)を使用して、有機薄膜のガス吸着のメカニズムを探るために、ガス吸着とガス脱着の反動速度論的な検証を行った。1価の低級アルコール(メタノール・エタノール・プロパノール)とアセトンを使用して一定濃度のガスを供給し、雰囲気の温度(20℃、30℃、40℃)を変化させたところ、高温になるにつれて吸着速度が低下した。また、フィックの第2法則を適用、すなわち非定常状態拡散におけるこれらVOCの拡散係数を求めたところ、従来、既存の薄膜(Polyaniline-emeraldine base thin film)で報告されている拡散係数よりも1~2桁、大きいことが分かった。また、バルク材と比べてフッ化炭素薄膜の密度は4割程度小さいことも分かった。これらのことから、高温になると脱着反応の方が支配的になり、見掛け上ガス吸着速度が低下するものと推定された。さらにVOC 1ppmあたりのガス吸着量(センサの感度)は1価の低級アルコールでは分子の大きさによらずほぼ一定であるのに対し、アセトンは大きいことが分かった(アセトンはセンサ感度がアルコールよりも高い)。また、VOCにアセトアルデヒド、トルエンを使用してガス吸着測定を行ったところ、アセトアルデヒドはセンサ感度が高く、トルエンはガス吸着量が高いことが分かった。
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