Research Abstract |
本年度は従来のクロメート処理に変わる新規な自己修復コーティング開発のため,材料表面にナノ材料と有機修復剤をコーティングし,自己修復性能の評価および最適化を行った。さらに,コーティングの修復プロセスの解析を行った。実施内容は以下のとおりである。 1.ナノ粒子と有機修復剤のコーティングと自己修復性能の評価:金属材料としてマグネシウム合金を用い,その表面にチタニアナノ粒子をディップ法でコーティングを行った。その後に浸漬法で芳香族系修復剤を含浸させ,複合化皮膜を形成させた。修復剤含浸では溶液のpHを変化させ,コーティングの最適化を行った。試験片にスクラッチ試験機を用いて欠陥を模擬した傷を入れ,それを食塩水溶液(腐食試験液)に浸漬させ,電気化学測定である交流インピーダンス法による分極抵抗の測定を行い,経時変化を測定した。試験の結果,分極抵抗の上昇が観察され,自己修復性が確認された。pH5で有機修復剤を含浸させたものが最も高い分極抵抗値を示し,コーティングの最適化を行うことができた。さらに,ナノ材料としてナノフレーク(薄片),ナノファイバー状に修復剤を複合化させることを検討し,修復剤の複合化が確認され,それらを分散処理することで各種樹脂に混合できることを確認した。 2.コーティングの自己修復プロセスの解析:スクラッチ傷部の観察により修復プロセスの解析,特に局所的な物質移動およびそのdriving forceの解析を行った。試験後の試験片傷部および断面の観察を行ったところ,芳香族系修復剤の移動が観察された。この修復剤はpH感受性を有しており,コーティング傷部近傍で生じる酸素の還元反応により,水酸化物イオンが発生し,pH上昇を引き起こし,修復剤が移動することが示唆された。
|