2009 Fiscal Year Annual Research Report
マグネシウム拡散法による高性能二ホウ化マグネシウム超伝導線材の開発
Project/Area Number |
21560764
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
熊倉 浩明 National Institute for Materials Science, 超伝導材料センター, センター長 (90354307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 明善 独立行政法人物質・材料研究機構, 超伝導材料センター, 主任研究員 (50354303)
戸叶 一正 独立行政法人物質・材料研究機構, 超伝導材料センター, 研究業務員 (60361169)
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Keywords | 二硼化マグネシウム / 拡散反応 / 超伝導線材 / 機械加工 / 充填率 / 臨界電流密度 |
Research Abstract |
純Mg棒をコアとして配した内部Mg拡散法により、熱処理温度を変化させて7芯のMgB_2線材を作製した。Mg棒をTa管の中心に配置し、すき間にB-SiC混合粉末を充填して線材に加工した。この線材を7本束ねて更にCu-Ni管に挿入し、径1.3mmの線材に加工した。純Mg/[B-(SiC)粉末]/Ta/(Cu-Ni)管からなる複合体は、室温において破断することなく最終的な線材径まで加工することができたが、この加工のメカニズムについては現段階ではまだよくわかっておらず、今後の研究課題である。この加工のメカニズムの解明は、長尺線材の作製など今後線材の断面減少率(加工度)が増大してくると重要性が増すものと思われる。最高のJ_cを与える熱処理温度は640℃であり、この時B層はほぼ完全にMgと反応してMgB_2が生成することがわかった。一方700℃以上の熱処理温度では、J_cの再現性が悪くなることも判明したが、これは線材長手方向のMgB_2生成層の不均一性によると考えられる。本実験で得られたJ_cの最高値は4.2K、10Tで約10^3A/mm^2、20K、3Tで10^3A/mm^2以上と、従来のPIT法を大きく凌駕する値であり、また、これまで作製した鉄管を使った拡散法線材よりも高い。Ta管を使ってより高いJ_cが得られる理由は、Ta管は鉄管よりも硬度が高く、B-SiC粉末の充填率がより高くなるためであることが組織観察からわかった。 本年度の研究で、10Tにおいて実用レベルの~10^3A/mm^2が得られたことは特に画期的な成果であると考える。本Mg拡散法においては、現段階ではまだ、MgB_2のコア数、線材への加工度、SiC添加量など、いくつかの製造パラメータが最適化されておらず、これらのパラメータを最適化することで、更なる高J_c化が可能であると考えられる。ただし、本拡散法では熱処理後にMgコアに大きなボイド(カーケンドールボイド)が形成され線材全体のJ_cを低下させる、という難点もある。今後は高圧熱処理など、このボイドを減らす手法についても研究を行う予定である。
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