Research Abstract |
これまでに,大粒径で且つ迅速な金属回収が可能であるマイクロカプセルを調製するために,1)内水相滴の粒径,2)内水相と外水相の浸透圧差,3)骨格物質の選択等を制御し,モデル金属イオンとしてパラジウムを用いた塩酸溶液からの貴金属回収速度を測定した結果,貫通孔を有しないマトリクス型のマイクロカプセルでは,抽出速度は非常に遅く,且つ,抽出率も1に達しないが,貫通孔を有するマイクロカプセルを用いることで,内部拡散の影響が無視でき,非常に迅速に金属イオンを抽出できることを明らかにした.また,骨格物質にジビニルベンゼンのみを用いることにより,粒径制御型の小粒径マイクロカプセルと同等の抽出速度を達成することが出来た.このマイクロカプセルをメッキ廃液からの有価物回収に適応し,無電解ニッケルメッキ廃液に存在するNi,Cuの回収およびメッキ液の長寿命化を目的として,2種類の抽出剤(LIX84IおよびPC88A)のマイクロカプセル化を検討した.LIX84I単独マイクロカプセルは非常に不安定であり,抽出に応用するには不適当であったが,PC88Aと混合することにより,LIX84Iを安定にマイクロカプセル化出来ることを明らかにした.また,2種類の抽出剤を内包したマイクロカプセルは2種の抽出剤の性能を保有しており,NiおよびCuの選択的回収が可能であることも明らかにした.更に混合抽出剤内包マイクロカプセルの抽出速度は,LIX84I単独またはPC88A単独内包マイクロカプセルと比較して飛躍的に向上し,更に抽出量も増加することが分かった.抽出速度に関する結果は溶媒抽出で報告されたものと同様であり,マイクロカプセル化した場合でも抽出速度促進効果があることが分かった.更に抽出量の増大も確認され,マイクロカプセル化抽出剤は溶媒抽出とは異なる抽出機構で金属イオンを抽出していることも示唆された.
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