Research Abstract |
本年度は,研究実施計画に記載した3項目について研究開発を進め,下記の成果を得た. 1)LW-PLSの高性能化 研究代表者が提案している局所PLS (Locally Weighted Partial Least Squares ; LW-PLS)のさらなる高性能化を目指して,アルゴリズムの改良を実施した.主要な成果は,A)対象の非線形性を考慮して入力変数に対する重みを適切に調整する方法を開発した,B)適応的な入力変数選択方法を開発した,の2つである.この結果,昨年度までのアルゴリズムと比較して,予測誤差を60%以上減少させることができるケースがあることを確認した. 2)LW-PLSの産業応用 昨年度に引き続き,複数の企業と協力してLW-PLSの産業応用を推進した.製薬産業では,医薬品製造設備を対象とした洗浄後残留薬物測定および顆粒中API含量測定について徹底した検証を行い,承認申請を行える段階に到達した.半導体産業では,ドライエッチ工程に加えて,化学機械研磨(CMP)プロセスにおける研磨レート予測を実施し,大幅な予測性能の向上を確認した.また,石油化学産業においては,複数の製造装置にてLW-PLSを実装し,日常の運転に活用されている. 3)グレイボックスモデルに基づくタンディッシュ内溶鋼温度制御システムの開発 昨年度に開発したグレイボックスモデルを改良すると共に,二次精錬終了時の溶鋼温度を調節することで連続鋳造設備タンディッシュ内溶鋼温度を精密に制御できる溶鋼温度制御システムを開発した.モデルの改良は,A)物理モデルによる予測誤差を推定する統計的モデルの構築に機械学習的な方法を取り入れた,B)物理モデル中の未知パラメータである伝熱係数を運転状態の関数として表現する非線形モデルを構築した,の2つの方向で実施し,いずれも予測精度・制御精度の向上に役立つことが確認できた.
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