Research Abstract |
今年度は,昨年度に引き続き,小型ソーラー電力セイル実証機IKAROSの四角折り膜面の軌道上における遠心力展開挙動の解明のため,昨年度改良した多粒子系モデルの座屈,折り目,接触などに関するパラメータを変化させて,非対称形状が発生したり展開が不完全になる条件について検討した.多粒子系モデルにより展開中の非対称形状はある程度表現できるが,IKAROSの非対称展開挙動の再現には,展開前の初期状態における膜面と展開機構の間の接触や滑りなどを考慮する必要がある.また,IKAROSの展開後の平衡形状を表現するには,ソーラーセイルに貼付された太陽電池などのデバイスの力学特性や熱変形を考慮できるように多粒子系モデルをさらに拡張する必要があり,これらは今後の課題となった. また,遠心力で展張される膜面の振動モードを計測し,多粒子系モデルや回転対称シェルの膜理論による解析結果と比較した.そのため,真空対応小型動電型加振器とステンレス製矩形真空槽などを用いた真空槽内回転膜面加振機構を製作し,回転円形膜面の加振実験を実施した.製作した機構は,回転軸に軸方向の滑りと回転の自由度を同時に与えるロータリーボールスプラインを用いて,回転軸をベアリングを介して軸方向に加振し,同時にステッピングモータとタイミングベルト・プーリによって回転させるものである.ファンクションジェネレータも利用して正弦波加振や正弦波掃引加振を行い,回転軸の加速度と膜面の変位を加速度センサ,レーザー変位計,カメラによって計測し,共振点を探索した.その結果,低次のいくつかの共振現象を明瞭に観察することができ,それらのモード形状は解析結果と一致するが,最低次モード振動数が解析結果より高いなどの差異が確認された.実験と解析の差異やその原因を明確にするには,加振制御装置の導入や解析における膜面の特性の近似法の改良などの検討が必要である.
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